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第174話
九流の部屋をいつものように掃除をしてざくろは自分の部屋へと戻った。
部屋の片隅に無造作に置いていたボストンバッグを手にとって数少ないボロボロの衣服を綺麗に畳んで詰めていく。
勉強机の上や引き出しの中の教科書やノート、シャーペンなどの細かいものもビニール袋に入れてバックの中へ直していった。
そして真新しい服は綺麗に畳んで紙袋の中へ詰め、左の手首に嵌めていた金のブレスレットを外してその服の上へそっと置いた。
それと一緒に大きな紙袋を用意した。
中身は四千万という大金だった。
それと一緒に『ありがとうございました』と一枚の手紙を添えた。
それらを全て九流の部屋へ運ぶとざくろは広い部屋を一巡した。
・・・先輩、怒るかな?
いや、呆れるかな?
心がチクチク痛み始めてざくろは苦笑する。
袋の中でキラリと輝くブレスレットに胸の痛みが増した。
呼吸するのも苦しくて胸の辺りを服の上からキツく握りしめた。
元々、卒業したら終わる関係だ
時期が早まっただけ
目を閉じて自分に言い聞かせると歯を食いしばる。
初めての感情に戸惑ってるだけだ
あきらの元へ戻れはこんな痛みすぐ消える
目頭が熱くなって涙が込み上がってきてざくろは上を向いた。
俺には勿体なさすぎる人だった
これ以上、側にいたら確実に迷惑をかける
あの男は必ず先輩にまでタカるに決まってる
堪えていた涙が頬を伝って流れ落ち 、ざくろは唇を噛み締めた。
俺なんかと一緒にいたらあの人の人生が堕ちる
それだけは嫌なんだ
だから・・・・
だから・・・・
さようなら・・・・・
「俺は忘れないけど、先輩は忘れて下さい」
流れる涙を手の甲で拭って、ここにはいない九流へ最後の我儘を呟くと、ざくろはボストンバッグを担いで部屋を出て行った。
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