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第176話

side 九流 夕刻、部屋に戻るなり自分の部屋の机に置かれた紙袋に絶句した。 一つは四千万という大金。 もう一つは自分がざくろへ贈った品だった。 ざくろへ見立てた色鮮やかな服は綺麗に畳まれていてその上には今日の朝まで付けていたはずのブレスレットが置かれていた。 隣に置かれている大金へ目を向けて九流は頭に血が昇りそうなこの何ともいえない気持ちを落ち着かせたくて数回深呼吸を試みる。 しかし、苛立ちも不安も悲しみも悔しさも何もかもが薄れることは無くてすぐに携帯電話を取り出し、ざくろへ電話をした。 案の定、携帯は電源が切られていて繋がらず九流は電話をソファへ投げつける。 「あの野郎、どういうつもりだっ!」 駄目元で自分の部屋を出てざくろの部屋へ走って行くとノックもせずに扉を押し開いた。 「ざくろ!」 怒鳴りつけるように名前を呼ぶもやはりざくろの姿はなくて九流は奥歯を噛み締め、拳を握りしめた。 「あ、あの・・・、西條なら退学して今日退寮しましたよ」 九流のことを見ていたざくろと同じ一年の生徒がしどろもどろになりながら声をかけてきて九流は眉間に皺を寄せて絶句する。 「・・・・は?」 「いや、何か家庭の事情とかで。俺、西條が出て行くの見たんで」 間違いないですと告げる後輩に九流は詰め寄った。 「家庭の事情?実家へ帰ったのか?ざくろと話したのか?」 「は、はい!なんか、心機一転するって言ってました。連絡先聞いたんですけど、一からやり直すから誰にも教えないって言われちゃって・・・」 悲しそうに笑う後輩に九流は冷や汗を流した。 ゴクリと唾を飲み込み、弾かれたように顔を上げると九流は帰ってきたばかりの学校へ走って向かった。

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