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第177話

嘘だろ・・・ 心機一転? 一からやり直し? 俺は? 俺のことはどうなる? 切り捨てられたのか? 九流は自分の出せる全ての力を振り絞って走り抜いた。 人生でこのかたここまで走ったことがない九流はそんな事実にすら気付かないほど必死になる。 「失礼します!」 職員室の扉を派手な音を立てながら開くと、数名の教師と門倉がいてビックリしたように自分を見てきた。 「猛!?帰ったんじゃ・・・」 「先生、西條ざくろが退学したのは本当ですか?」 門倉の声を遮り生徒会の担当を担う教師へ苦しい息を押さえ込みながら聞くと、教師は思い出したように手を叩いて大きく頷いた。 そして、デスクの引き出しから退学届けと書かれた白い封筒を取り出す。 「そうなんだよ。今日、突然渡されてね。引越しするらしいね」 「引越し!?」 「うん。家庭の事情なんだろうし深く追求もしなかったから良く分からないんだけどね。九流は仲よかったんだろ?聞いてなかったのか?」 「はい」 「そっかぁ・・・、ミステリアスな子だったしな」 カラカラ笑う教師に九流は目眩を起こすように一歩後退するがトンっと門倉の力強い腕に支えられて持ち堪えた。 「先生、その退学届けまだ受理してませんよね?」 柔和な笑顔で門倉が聞くと教師は頷く。 「良かったです。それならそれ、ちょっと僕に預けて貰えませんか?西條君の手違いになるかもしれないんで」 受け取ると言うより奪い取るように教師から門倉が退学届を手中へ納めると教師は驚きながらも困ったように容認してくれた。 「え!?んー・・・まぁ、いいけど9月1日には俺も提出しないとまずいし、それまでに退学するなら返してくれよ?」 「はい。それまでに西條君と話し合うんで大丈夫です」 にっこり笑って門倉はしっかりしろと言わんばかりにその退学届を九流の胸元へドンっと押し当てて答えた。 side 九流 終わり

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