「それで、何？喧嘩でもしたの？」 門倉は生徒会室へ戻ると自分用の大きな革張りの椅子へどさっと大きな音をたてながら腰掛け、九流へ聞いた。 「してない」 明らかに気を落として元気がない幼馴染みを見つめながら机に頬杖を付いて苦笑する。 「やめちゃえば？」 「・・・・」 「初恋は実らないってよく言うし」 「・・・・」 「去る者追わずがお前の信条だろ？」 教師から奪い取ったざくろの退学届をピラピラ見せつけるようにかざしながら言うと、九流はその退学届をパシッと奪い取りぐしゃりと握り潰した。 「うるせぇ」 から元気に吠える九流を前に門倉は溜息を吐いて腕を組み、真面目な顔で椅子の背にもたれかかった。 「猛、俺は西條のこと諦められるなら諦めた方がいいと思う」 机の引き出しからA4サイズの茶封筒を取り出し、九流へ手渡す。 それが何かすぐに察した九流の目が門倉を睨みつけた。 「・・・何、勝手に調べてんだよ」 凄むその目に門倉は臆する事なく真顔で言い返した。 「生徒相手に売りやってる何処の馬の骨とも知らない奴が幼馴染みに近付いてるんだ。調べない方がおかしいだろーが」 「次、あいつの事をそんな風に言ったらぶん殴るぞ？」 「ちょっとは頭を冷やせよ。ルックスは良くても環境が最悪だぞ？お前も少しは調べてるんだろ？」 内心ざくろとの仲を良く思ってなかった門倉の不満がここで爆発して九流はかなりショックを受けた。 「あの子が悪い訳じゃないのは分かる。環境が悪いんだ。でも、やっぱり環境って大切だろ？お前も俺の言いたいことは分かるだろ？」 説得するように問いかけてくる門倉に冷静になるよう自分を戒めながら九流は自分用の椅子へゆっくり腰掛けた。 「なぁ、門倉・・・。お前も本命が出来たって言ってたよな？」 この件について本腰を入れて話し合う気になった九流は顔を上げて門倉のことを真っ直ぐ見据えた。