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第189話

「九流先輩、私なんかよりお兄ちゃんを守ってあげて!私が我儘言ったから・・・」 縋るような瞳を向けて、あきらは懺悔した。 「学校も辞めちゃった・・・。私が側にいてなんて言ったから。お兄ちゃんが断らないの分かってて私、私・・・、ごめんなさいっ・・・・、お荷物でごめんなさい!お兄ちゃんの人生、めちゃくちゃにして・・・・ぅえぇぇ〜〜んっ、ごめん・・・なさ・・・・・」 大きな泣き声をあげながら、ずっと思っていた胸の内を吐き出し、何度も謝った。 決してざくろの前では言えない不安と苦悩、そして謝罪を繰り返すあきらをここにはいないざくろの代わりに九流が強く抱き締めてた。 「そんな風に思うなよ。ざくろは本当にあきらちゃんのこと大事にしてるよ。お荷物なんて思ってない。人生をめちゃくちゃにされたなんて思ってもない。だから変な勘違いしてこんなに泣く必要もないよ」 「・・・・っ、でも・・・、九流先輩と別れたって、お兄ちゃん本気だったのに・・・、先輩のこと本気で好きだったはずなの」 「・・・・うん。俺もそう思ってる」 泣きながら九流との関係を潰してしまった事を嘆くあきらに笑って頷いた。 そして、あきらの頬を濡らす涙を拭ってやる。 「あきらちゃん、俺は別れたつもりないから」 「え?」 「別れ話もされてないし。勝手にあいつがそう思い込んでるんだろけど・・・」 呆れたように息を吐きながらボヤく九流にあきらは手のひらで涙を拭って九流を見つめた。 「俺もざくろに本気だから・・・」 自分でも止めようのない恋心に苦笑して告げると、あきらは少し不安気に聞いた。 「お兄ちゃんとは高校生活だけの関係じゃないの?」 「は?」 「お兄ちゃんが・・・・」 口ごもるあきらに九流が少し考えを巡らせる。 以前、ざくろが卒業したら九流の気が変わると言っていたネガティブ発言を思い出し、困ったように呟いた。 「あいつのマイナス思考、本当にプラスに変える方法教えて欲しいよ」 この呟きにあきらはざくろの勘違いを見出し、心から安堵した。 兄であるざくろには幸せになって欲しい いつも自分より他人を先行するのが当たり前な兄にあきらは罪悪感を覚えていた。 そうさせたのは自分で、自覚があった。 九流の気持ちも聞けたあきらは深く息を吸い込むと、いつも常に心の片隅にあった言葉を助けを請うように、祈るように囁いた。 「お兄ちゃん、ごめんなさい・・・。幸せになって・・・・」

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