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第191話

九流があきらを宥めたあと、三人はお茶をしていると門倉が腕時計を見て言った。 「もう9時か・・・、門限もあるし帰ろうか」 「もう、そんな時間なんだな」 ソファから立ち上がり、帰ろうとする二人にあきらは寂しそうに眉を垂らす。 喜怒哀楽がすぐ顔に出るあきらが純粋に可愛らしい。 「また来るよ。ざくろと話もしたいしな」 九流がそういって、あきらを慰めると小さく笑って頷いた。 「戸締りしっかりしてね」 玄関で靴を履きながら門倉が注意すると、素直に頷きあきらは返事をする。 「はい。二人共、気をつけて帰ってくださいね。今日は本当にありがとうございました」 靴を履き終え、帰っていく二人をあきらは見送った。 部屋の鍵を閉めたあと、リビングの机の上の三人分のコップを片付けているとき、部屋のチャイムが鳴った。玄関へ視線を向けて、先ほど帰ったばかりの九流達だろうかと首を傾げる。 「ん?忘れ物かな?」 小走りで玄関へ向かい、九流達が戻ってきたのだと扉の覗き穴から外を見たあきらは悲鳴を上げた。 「キャアッ!!!」 そこにはニタニタ笑う父親が立っていて、あきらは驚きで玄関の少しの段差に足を躓かせて尻餅をついた。 「あ〜き〜ら〜、開けてくれ〜」 ガンガンガンと拳で扉を叩いてくる京介に尻餅をついたまま体を引きずって後退させ、急いでリビングの自分の携帯電話を手に取った。 ざくろへ掛けようとするが、指が止まる。 これ以上、兄に負担を掛けたくなくて躊躇した。 そうこうしていると扉を叩く音は激しくなり、父親の大きな声は脅しも加わった。 「さっさと開けろよあきら!この扉、ぶっ壊すぞ!?てめぇが居るのは分かってんだからな!」 幼い頃から植え付けられてきた恐怖があきらを支配した。 怖くて怖くて、パニックに陥る。 震える指先で電話のリダイヤルにあった九流の名前に目が留まり、その場所へ指を触れさせた。

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