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第192話
帰りのタクシーの中、九流と門倉は今後の対策を練っていた。
「とりあえず、明日にでもざくろと話をつける。昼間にもう一度・・・、わりぃ」
話してる最中、携帯電話が鳴って九流はポケットから電話を取り出しディスプレイを見た。
あきらの名前が表示され、門倉へ一言告げるとその電話に出る。
『ーーーーガッシャンッ』
電話に出て声を出そうとした時、受話器から何かが割れる音が聞こえて九流は息を呑んだ。
「あきらちゃん!?」
名前を呼ぶと、次に聞こえてたのはあきらの泣き叫ぶ悲鳴で冷や汗が流れた。
『ィヤァーーーーッ!キャアーーー!ご、ごめんなさいっ!お父さんっ!!ごめんなさいっ!!!』
電話から漏れる悲痛の叫びに門倉は自分の携帯電話を取り出し、ある場所へ電話をした。
「あきら〜。手間取らせんなや?俺も暇じゃねーんだよ」
扉の鍵を髪留めのピンなどでこじ開けた京介は家の中へ進入し、リビングに置いてあったスタンドを殴り倒して電球を割った。
そして、あきらの長い髪を鷲掴み凄み始めた。
「おい、ざくろどこ行った?」
部屋にざくろが居ないことに京介は舌打ちして聞くと、あきらは唇を噛んで教えないと首を横へ振った。
「てめぇは素直にお兄ちゃんって呼んでりゃいいんだよっ!グズがっ!!」
空いていた方の手であきらの顔面を平手打ちする京介に、痛みと恐怖であきらは悲鳴をあげて涙を流した。
「やっ!許して・・・!お兄ちゃんにはもう関わんないでっ!」
「息子に関わるなとか娘のてめぇに何で俺が指図受けなきゃなんねーんだ?本当、教育がなってねーガキだな」
ガツガツと頭や顔を拳で殴りつけてくる父に身を縮こまらせてあきらは耐え忍ぶ。
ひとしきり娘を殴ると、あきらがソファの下に隠してあった携帯電話を見つけて、拾い上げた。
あきらへ見せつけるように電話を翳し、ニヤリと笑う父に絶望が広がる。
「さぁ〜って、愛しのお兄ちゃんに電話だ」
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