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第197話

「いい加減にしろ・・・、あきらに触るなっ!!!」 切っ先を喉仏へ突き付けられ皮膚を割かれて京介はピリリと痛む感覚に冷や汗を流した。 息子からの本気の殺意に恐怖を初めて感じ、動きを止めた。 「ま、待てよ!落ち着けざくろ!!俺を殺してどうなる?お前は豚箱行きで、あきらは犯罪者の兄がいるって、一生後ろ指さされて生きてくんだぞ?」 「・・・・・」 「豚箱から出てきたお前はあきらの元へ帰れんのか?あきらに煙たがられて惨めな人生歩むだけだぞ?」 両手を上へあげて降参するようなポーズを取り、考え直すように早口で息子を説得するが、ざくろは頭の中を占拠する怒りに、幾度となく込み上げては押し殺してきた殺意をここで解放させた。 「安心しろよ。あんたを殺して俺も死ぬから。あきらの戸籍は少し前に西條家から移してある。あの名前ばかりの母親の姓を借りた。あきらが身内の話題で持ち上がるのは最初だけだ」 静かに淡々と述べられ、自分の命が本格的に危険なのを京介は察知する。 「いやいや、ざくろ!落ち着けってば!!あきらにはお前が必要だ!そうだろ?お前が死んでどうする!!?」 「お金ならちゃんと用意してる。俺が死ねばちゃんとあきらに入るように。だから・・・、あきらにはもう俺は必要ない」 修羅の如く顔を怒りに歪ませていたざくろは表情を無にして、あきらに視線のみを向けた。 「・・・あきらが成人したらどうせ離れるつもりだった。邪魔になりそうなら死ぬことも視野に入れていた。時期がほんの少し早くなっただけだ。俺には生へしがみつくほどの価値なんてこの世にはもう無いんだよ。・・・父さん」 うっすら口元を笑みにし、決して京介を父と呼ぶことをしなかったざくろは皮肉を込めて初めて父と呼んだ。 それと同時に息を吸い込み、歯を食いしばって呼吸を止め、握るナイフを思い切り振り上げて京介の喉元目掛けて振り下ろした。 と、同時にあきらの悲鳴と部屋中の扉と窓硝子が割れ、大勢の警察官がなだれ込んできた。 あまりの非常事態に部屋にいた人間は体を硬直させ、目を見張った。

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