「あきら・・・」 地面に座り込んで呆然とするあきらを気遣うように膝を折って目線を合わせながら、ざくろは聞く。 「・・・・・あきら、あいつが大切？あんなのでもやっぱり必要？」 兄の質問にあきらは小さく首を振って、瞳に涙を溜めながら掠れる声で答えた。 「お・・・お兄・・・ちゃんだけ、わたしには・・・・お兄ちゃんだけが大切っ・・・、お兄ちゃんだけが必要だよぉ・・・・・」 ざくろへ抱きつくのではなく、兄の顔が見えるように手を握りしめ、あきらは涙を流して訴えた。 「いなくならないで・・・、邪魔なんて絶対ない！お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだもん・・・、お金なんていらない！死なないで！！生きて側にいてっ・・・、大きくなっても私が大人になってもお兄ちゃんは私の側にいてくれなきゃやだぁ・・・」 先ほどの京介とのやりとりを訴えているのだと理解し、泣く妹に眉を寄せた。 あきらは兄へあの残酷な考えを改めることを誓って欲しいと切実に声を張り上げて詰め寄る。 「約束して！死なないって！離れないって！！私の側にいるって約束して！！！」 ざくろの両腕を掴み、爪を立てて必死に頼み込んでくる妹の力強さに驚く。 皮膚に爪が食い込み痛みを感じるものの、それだけあきらが必死なのだと思うと全く気にもならなくて、逆にその痛みが愛おしくすら感じた。 「あきら、ごめん・・・。側にいるよ。約束する・・・」 妹の手を外させ、包むように抱きしめてざくろは囁くように告げた。 あきらはそんな兄の腕の中で緊張の糸が切れたのか、意識を途切らせた。 「不安にさせてごめんな・・・」 あきらの涙を拭いながらざくろはもう一度、申し訳なさそうに謝った。 あきらは父親の暴力で顔を腫れ上がらせ、出血もし、発熱していることから病院へ移送された。 連れてきた警官を全員帰らせ、静かな部屋に残った死刑宣告を待つしかできない京介とその客の鈴木は青い顔で地面に這いつくばるように土下座をしていた。 そんな二人を前に門倉がざくろへ腕を組んで聞いた。 「っで？殺すの？生かすの？悩んでるならとりあえず刑務所に無期懲役ってことでぶち込んで保留する？」