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第204話
「お前、寮にはもう戻ってこないのか?」
「退寮したので・・・」
「学校は本当に辞めるのか?」
「退学届を提出しましたから・・・」
「・・・・本気なのか?」
「・・・・・・あきらの側に居てやりたいんです」
ピリピリとした空気感の中、尋問ともとれる九流からの質問にざくろは目を合わせることができず、視線を下げて答えていった。
腕を組んでざくろを見下ろす九流は、目を細めてこれからのことではなくこれまでのことに質問を切り替えた。
「お前、売りはしてないよな?」
「え!?・・・はい」
質問内容の変動に驚いて顔を上げると、九流の真剣な瞳にざくろは頷く。
「バイトしてるって何のバイトだよ?」
「・・・クラブの受付です」
答えると同時にバイトのことを思い出し、青ざめた。無断で仕事を放り投げ、連絡もせず今に至る自分を恩がある林は怒っているだろう。
「先輩!話の途中にすみません!!電話してもいいですか!?バイト先に俺、何も言わず飛び出してきてしまってて!!」
慌てふためく姿に仕方がないと了承すると、ざくろは電話を取り出し、バイト先へ電話をかけた。
オーナーの林がすぐに電話口に出たが、その口調は責めたり怒ったりするものではなく、心配したといった優しいもので、胸が熱くなった。
その優しさに感謝と謝罪を述べて電話を切ると、目の前に座る九流に報告する。
「あの・・・、ありがとうございました。ちゃんと電話できました」
一部始終見ていた九流は息を吐いて、目を細めて命令する。
「今からは俺との話し合いを優先させろ」
威圧的な空気と物言いにざくろは気圧されて頷いた。
「あの四千万と俺が買ってやった服やアクセの返品はなんだ?嫌がらせか?」
質問が始まりざくろは緊張の中、少し息苦しさを段々感じ始めてきた。
呼吸が少し乱れ、疲労感からか体が熱っぽく、視界がくらくらし始める。
しかし、九流との話し合いを全うしたくて自分の体調不良を隠すよう気持ちを奮起させた。
「・・・四千万は専属の解約金です。以前から返したかったんです。あと、プレゼントは別れるなら返さないとって思って・・・、今までありがとうございました」
土下座するように頭を下げるざくろを見下ろしながら、九流は長い足を組むと不機嫌な声で聞いた。
「お前さ、俺と別れたいの?」
この質問にざくろは頭を上げ、膝の上で握りしめる拳にギュッと力を込めた。
そして奥歯を強く噛み締め、意を決したように頭を縦に振った。
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