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第208話
監禁だなんて嘘だと目を向けるざくろに九流は真面目な顔で言った。
「言っとくけど、俺はやると言ったらやるからな。あと、こんな薬なんて生温いもんじゃねーぞ。気が狂ってもお前が壊れても離してやらねぇし、止めもしねぇ・・・。ほら、早く選べ」
パンっと頬を平手打ちされ、ざくろの朦朧とした意識が少しだけ覚醒した。
「っ・・・」
冷たいような熱いような九流の瞳にざくろの心がせめぎ合う。
怖いくらい緊迫したこの空気も、気が触れそうなこの体も訳が分からなくて混乱した。
そんなざくろにコツンっと額と額を合わせて九流は瞳を閉じて囁いた。
「好きだ・・・・・」
脅されていた筈なのにいきなりこんな甘い告白を聞かされてざくろの瞳からぶわっと一気に涙が溢れた。
胸が痛すぎて呼吸が止まる。
このまま心臓も止まれと念じてしまうざくろに九流は触れるようなキスでざくろの心拍数を上げた。
「一生、俺のもんだって約束しただろう?俺を裏切るなよ・・・・」
「・・・・・」
「離れていくなら俺のこと、殺してからいけ」
ざくろの濡れる漆黒の瞳を見つめ、九流は苦しげに告げた。
「どうしたら俺の気持ちが伝わるのか教えてくれよ・・・」
言葉と一緒にポツリと九流の涙が落ちて、ざくろの頬を濡らした。
「好きなんだ。お前のことが・・・、ざくろのことが過去も含めて全部好きだ」
涙を落とし、自分への気持ちを紡ぐ九流にざくろは思い切り息を吸い込み、吐き出すと同時に大声で泣きながら謝った。
「ぅ・・・ぅあぁぁんっ・・・・、ご、ごめんなさいっ、ごめんなさいぃーーっ・・・」
幼い子供のように声を上げて謝りながら泣くざくろは純粋に可愛くて綺麗で、九流の庇護欲を掻き立てた。
生まれた時から守られ方を知らないざくろはこのとき、初めて妹とは違った意味で自分を必要としてくれる人がいることを知った。
自分を守り、愛してくれる人がいることに痛感した。
いつも何処か引け目を感じ、自分よりも他人を優先させては顔色を伺ってきた人生を辛いとは思わなかった。
それしか経験してこなかったから、それ以外の人生があると思わなかったのだ。
自分にはあきらという妹がいる。
それだけで人生、得なのだと思っていた。
九流に会うまでは・・・
九流と出逢って、愛され、守られ、必要とされるまで・・・
自分には身に余る程の完璧なこの男が俺の為に涙を流して求めてくれるこの現実をまだ信用できなかった。
だけど、夢なら夢でいい・・・
せめて、九流にこれ以上涙を流させたくなかった。
「ご、めんなさい・・・・、せんぱ・・・ごめん・・なさいぃ・・・・。好き・・・好きです・・・・別れたくない・・・っ・・」
瞳をギュッと閉じて、ざくろは泣きながら本音を口にした。
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