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第209話
「一生、先輩の側にいたいです」
素直な気持ちを白状するざくろの手を離し、九流は震える華奢な体を抱きしめた。
まだどこか不安定でまだ自分を蔑ろにするざくろを完全に信用した訳ではないが、この言葉は本音だと信じたかった。
あの付き合えた日、何があっても離さないと心に誓った。
自分だけのものだと心が満たされた
大切なものが今までなかった自分に初めてできた存在。
それは自分にとって、あまりにも大きな影響を与えた。
手離せば楽になると思う
昔の自分に戻って、何も知らない時期にかえれたらどれほど楽だろう
でも・・・、
この高揚感や自分以外のこれ以上ない大切な存在を得る幸せは今後、一生涯見出せないと思うと、どうしても昔に戻る気になれなかった。
そう思う自分はざくろの一挙一動に振り回された。
それが悔しくて辛いこともあるが、こうして心を開いて本音を晒け出し、自分のものだと実感したとき、これほど満たされるものはないとも思う。
本気の恋がこんなに苦しいと知らなかった。
本気の恋愛がこんなに辛いと知らなかった。
それと同時にこれほどまで自分を変化させ、満たすものなのだと知った。
「ざくろ、抱きたい」
耳元で甘く囁き、キツく抱き寄せると九流はしがみついてくるざくろへキスをした。
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