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第212話
重く怠い体がふかふかのベッドの上で寝返りをうち、ざくろは薄っすら目を開いた。
どことなく見知った風景に再び安心して目を閉じたが、数秒後にやっぱりおかしいとバチっと目を開いて体を起こした。
そこは寮の九流の部屋で自分が頻繁に過ごしていた部屋だった。
「・・・・・なんで!?」
腰に激痛が走って、最後まで体を起き上がらせることが出来ずなかったざくろはベッドへ顔を突っ伏す。
「いたぁ・・っ・・・」
痛みに耐えながらそっと寝返りをうって部屋の中を見回すと、ベッド脇にある丸い小さなテーブルに水が入ったペットボトルとサンドイッチ、そして九流の字で書かれた手紙と携帯電話が置かれていた。
手紙に手を伸ばし、それを黙読する。
『夕方までに帰る。勝手にいなくなったら次は死ぬまで犯す』
とても冗談とは思えない脅し文句に青ざめる。
手紙をテーブルへ戻し、喉がカラカラでペットボトルの水を飲んだ。
お腹も空いていたのかサンドイッチを見ると食欲が出てきてベッドの上に座ったままざくろはモグモグとそれを頬張る。
九流家が用意したのか寮が用意したのか不明だが、味と見た目は絶品でざくろは美味しなと感心しながら全てを平らげた。
次に携帯電話を手にとってざくろは妹へ電話をかけた。
『もしもし、お兄ちゃん?』
「あきら?今どこ?」
直ぐにあきらが電話に出て安堵する。
妹は昨夜の特別室で過ごしていた。昨日は時間も遅いことから検査が不自由分だったのか、今日は一日かけて精密検査をするらしい。
その為、もう一泊入院すると報告を受けた。
「寂しくない?俺、今寮に戻って来ちゃってて、夕方までどうしても出られないんだ。必ず顔は出すから先生の言うこと聞いて待ってて」
『うん。全然平気!大丈夫!!私も検査でバタバタしそうだから。それより、ご飯もすっごい美味しくて部屋も広くて超綺麗なの!検査結果大丈夫だったら夜はフランス料理のフルコースにしてくれるって!お兄ちゃん、一緒に食べよー』
「それは凄いね。間に合うように行くね」
優しく告げて電話を切ると、怠い体を癒すべくざくろはパタリとベッドへ倒れた。
昨夜はお風呂に入った記憶はないが、体はベタついていなかった。知らない間に着せられているシルクのパジャマは九流のものなのかブカブカだ。情事後の処理も九流がしてくれたようで、そのまま寮へ連れてこられたのかとざくろは考える。
「フランス料理のフルコースって・・・病院で絶対あり得ないよね」
ぼんやりと高い天井を見つめて妹の先ほどの台詞を思い出し、ざくろはフフッとおかしくて笑みをこぼした。
どうせ、九流の仕業だと思案してると携帯電話が鳴ってディスプレイを見る。
相手はまさしく、その九流からでざくろは笑って電話に出た。
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