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第216話
「なんで、ここにいるんだ?部屋で待ってろって言っただろ?」
不機嫌な顔で睨みつけて聞くと、ざくろは手に持っていたレモンティーのペットボトルを掲げた。
「喉が渇いたんで買いに来たんです」
「冷蔵庫に飲みもんぐらい入ってるだろ?」
「でも、あれは先輩の・・・」
「俺のもんでもいいから勝手に飲めよ!いちいちそんなことまで言わせるな!」
言葉を遮り怒鳴りつけてくる九流にビクっと肩を竦ませ目をキツく瞑った。
それを見たざくろを囲む生徒達は九流の怒気に恐怖で後退していき、門倉が見兼ねて助け船を出した。
「まあまあ、落ち着けって。西條もさぁ、猛のものは自分のものって感覚で接してみたら?そんなに遠慮する必要ないよ?」
「・・・・・」
困った顔で黙り込むざくろに門倉が息を吐いてざくろへ聞く。
「じゃあ、仮に逆の立場なら西條どう思う?」
「え?」
「もし、西條の部屋で猛が喉が渇いて冷蔵庫から飲み物勝手に飲んだら嫌?怒る?弁償して欲しい?」
「ま、まさか!別に好きに飲んでくれて構いません!」
拳を握りしめて大声で即答するざくろに門倉はクスリと笑う。
「ね?猛も同じだよ」
言われてハッと気付いたざくろはゆっくり、九流を見上げた。
まだ少し不機嫌な九流にしゅんと頭を下げて素直に謝る。
「ごめんなさい・・・」
その謝罪に九流は頷くと、自分からも歩み寄るように謝った。
「俺も怒鳴って悪かった」
いつも傲慢な幼馴染みの謝罪に門倉は目を見開き驚いたが、ざくろはふわりと笑って九流の服の裾を掴んだ。
「ジュースもですけど、ここで待ってたら先輩に早く会えると思って来たんです。生徒会、お疲れ様でした」
頬を少し赤くして真相を話すざくろに九流は嬉しくてニヤける口元を掌で覆い隠した。
「ん。部屋に帰んぞ」
自分の服を掴むざくろの手を握りしめ、九流は門倉にまたなと一言残して帰っていった。
取り残された門倉は幼馴染みの後ろ姿を見つめながら感心するように呟いた。
「猛も丸くなったなぁー・・・・」
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