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第218話

「ざくろ、退学せず戻ってこないか?」 買ってきたレモンティーをコップに注ぎ、堪能していると、九流が自分の横に座って真面目な顔で聞いてきた。 レモンティーをテーブルの上へ置くと困った顔で伝える。 「すみません。あきらの側に居てやりたいんです。だから・・・」 言葉を濁すざくろに九流は目を閉じて溜息を吐いた。 「あきらちゃんが大事なのも分かる。でも、ざくろはどうしたい?あと、俺のことも多少は視野に入れて欲しい」 九流もあきらが大事じゃないわけではない。 ただ、いつもあきらあきらとそちらばかり優先されて悲しくないわけでもなかった。 まして、あきらの側にいるならば学校、寮共に離れ離れになってしまう。 「・・・・・俺は」 考えが纏まらず口籠っていると、九流の部屋の扉が叩かれた。 「はい」 返事を返すと、扉が開いて門倉が顔を見せた。 「妹ちゃんとこ行かないのー?」 どうやら今日、これからの見舞いを兼ねた食事に門倉も参加するようで、待ち兼ねたと二人を誘いに来たようだ。 「タクシーも呼んでるし早く行こう!妹ちゃんも待ってるぞ〜」 少し重かった空気は飄々とした門倉のおかげで軽くなり、ざくろは内心安堵した。 門倉が呼んだタクシーに三人は乗ると、車内では九流と門倉が生徒会の仕事の話をし始めた為、ざくろはずっと黙っていた。 「あっ!そうだ!」 九流との話がひと段落したのか、門倉は鞄の中から白い封筒を取り出してざくろへ手渡す。 それは自分が教師に提出した退学届でだった。 「もう必要ないでしょ?捨てておきなよ。先生には退学、退寮取り消しって伝えておくから」 門倉の言葉にざくろは顔を上げ、困った顔で九流を見つめた。 「・・・え?もしかして退学するの!?」 驚いたように聞かれて、ざくろは申し訳なさそうに答えた。 「あきらと話し合って決めます」

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