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第220話
料理のコースも終盤でデザートと飲み物が運ばれてきた。
全員笑顔で食事をしていたが、門倉が頃合いを見計らっていたかのように和やかな空気を少しピリリとしたものへ切り替えた。
「ねぇ、君達の父親なんだけど、結局どうする?このまま無期懲役でいいの?」
アイスコーヒーを飲みながら最終確認をとる門倉に飲んでいたレモンティーをテーブルへ置いてざくろが本音を口にした。
「俺的には抹殺でお願いしたいです」
視線を隣に座る妹に移すと、オレンジジュースを飲むあきらが眉を下げた。
「私もお兄ちゃんと同じ意見だよ。でもね、それをここで決断するとお兄ちゃんが人殺しになるのかと思うとやだ」
ざくろの意見には賛成だが、兄の身を案じるとやはり賛成できないとあきらは意見を述べる。
その返答にざくろはあきらと向き合い、両肩を掴んで説得をし始めた。
「あきら!千載一遇のチャンスだよ!?あいつが生きてたら絶対また危険になる!俺が殺してみせるから」
真剣な目で言うと、あきらは瞳を閉じて大きく溜息を吐いた。
「あのね、お兄ちゃん。私の話聞いてる?お兄ちゃんに殺人犯になってほしくないの!本当にお父さん殺したいなら、私がやる」
瞳を開けてあきらは兄の目を見て告げた。
真剣な眼差しにざくろの眉間に皺が寄る。
「絶対駄目!」
「私もお兄ちゃんが手を下すのは絶対、嫌!」
両者一歩も引かず睨み合う兄妹に九流と門倉が息を吐く。
「俺が殺してやるってば」
軽く右手を上げて九流が名乗り出るとざくろとあきらが「駄目!」と怒鳴った。
あくまで誰にも迷惑を掛けたくない二人のようで門倉が失笑した。
「んじゃ、無期懲役コースでいいんじゃない?脱獄でもしようもんなら射殺ってことで。はい!決まり!これにて喧嘩は終了〜!」
パンパンと手を叩いて兄妹の険悪な空気を門倉が笑顔で払拭した。
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