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第31話

二人は再び風呂に入り、今度は服を着てリビングに戻ってきた。 「そう言えば、いつの間にか年越してたな」 時計を見ると、深夜一時を回っている。 「こんな年越し初めてだよ」 湊は笑った。肇もこんな事をして年越すなんてな、と笑う。 「あけましておめでとう、肇」 「今年もよろしくな、湊」 お互いに新年の挨拶を交わすと、軽くキスをした。何だかラブラブカップルだな、と肇は思って顔が熱くなる。 「寝るか」 肇は自室へ行こうとした。けれど湊は動かない。どうした? と顔を覗くと、彼は顔を赤らめて視線を逸らした。 「何で今頃照れてるんだよ……って、ちょっと?」 ぐい、と腕を引かれ、彼の腕の中に収まる。はあ、と切なげにため息をついた湊は、腕に力を込めた。 「湊?」 「肇……」 ちゅ、と耳たぶにキスをされ、敏感になった身体は大きく反応してしまう。 「身体は平気?」 「ま、まあ……。なあ、ホントに何? ちゃんと言えっていつも言ってるだろ」 すると湊は、肇の耳に唇を付け、囁いた。その言葉に肇はぶわっと全身が熱くなり、身体が固まる。 「お、おま、それなら風呂入る前に言えよっ」 「だって……」 湊はそう言いながら、肇の身体を撫で回した。 「ちょ、オレ、結構敏感になってるからそんなんしたら……っ」 肇はまたゾクゾクと背中を反らせ、下半身に熱が溜まっていくのを感じる。 「み、湊……、あ……っ」 尻を撫でられ思わず声を上げると、湊は肇の首筋にキスをした。同時に服の中に手が潜り込んできて、乳首を摘まれる。 「んっ、ふ、服着た意味ねぇじゃんっ」 先程とは打って変わって性急な湊の愛撫に、肇は戸惑った。どうやらさっきは、かなり慎重にしていたらしいと知ると、湊が我慢していた事が分かる。 「ごめん、やっぱりスマートにしてたいじゃん? 好きな子の前では」 でもやっぱり無理だった、と湊は首に噛み付いてきた。思わず悲鳴を上げると、湊は口を離し、舌打ちする。 「アイツもこんな気持ちなのかな……」 普段からは想像できない湊の舌打ちに、肇はドキッとした。アイツって誰だよ、と聞くと今は話したくない、と再びそこに舌を這わせる。 「やっぱり、俺は跡を付けるの嫌だなぁ」 「……っ、さっきから何言ってんだよっ」 湊は苦笑して、また後で話すね、と再び愛撫を始めた。やってきた快感の波に、肇は身を委ねる。 (もう一回したいって……顔赤くして言われたら……) 可愛いって思ってしまった。肇は、結構、だいぶ、かなり湊の事が好きなようだと他人事のように思う。 何だかんだで彼の事を許してしまうのは、そういう事だろう。 「湊……湊……」 上擦った声で呼ぶと、湊は愛撫を止めて見てくる。顔が熱いけど言わずにはいられなかった。 「オレ、お前の顔と声、結構好きかも……」 「……結局外見?」 湊が口を尖らせる。肇は違う、と訂正した。 「お前の……愛想笑いじゃなく、ニコニコしてるの好き……」 初めは嫌いからから始まった湊との出会い。湊の人となりを知って、彼も人並みに悩んだり怒ったりする事を知って。人に合わせることで生きてきた不器用な彼が愛おしい、と肇はぎゅっと抱き締めた。 「……っ、そんな事言われたら、またすぐにイッちゃうかも……」 湊は冗談交じりに言う。でも、何だって良いんだ、と彼は笑った。 「好きな人とするエッチって、良いなって。エッチじゃなくても、触れ合ってるだけで心が温かくなるね」 「……うん」 肇は頷くと、湊のキスを受け入れた。  ◇◇ 数時間後、たっぷり楽しみながら愛し合った二人は笑いながらベッドに入る。シングルベッドだし湊の分の布団も用意したけれど、この方が温かいと布団の中で抱きしめ合った。 「明日、純一たちと初詣行こうって」 「オッケー。……なあ」 肇は先程湊が言っていた、アイツとは誰の事か聞いてみる。すると湊はああ、と苦笑した。 「恋人にやたら跡を付けたがるヤツがいてね」 「だから、誰だよ?」 「…………司」 はあ? と肇は声を上げる。湊は、俺にはその心境、分からないなぁ、と呟いた。 でも、と肇は思う。想いが爆発して噛んでしまうのは、言葉が上手く話せない年頃の子供と一緒だと。 「……司って、いつから無口なんだ?」 「純一が言うには、小さい頃から無口無表情だったらしいよ?」 なるほど、と肇は納得した。もしかしたら肇の読みは当たりかもしれない。 「司は、案外子供なのかも」 今度、純一にでも聞いてみたら? と肇は言うと、気が向いたらね、と湊は営業スマイルだ。どうやら聞く気は無いらしい。 ふぁーあ、と肇はあくびをした。さすがに疲れたし眠たい。 「眠い。寝るぞ」 「うん、おやすみ」 お互いキスをすると、目を閉じる。何だか甘々カップルだな、と肇は顔を赤くしたが、すぐに眠りに落ちた。

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