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逃亡
何か手伝うことはないだろうか。
部屋を見回して靴が無いことに気が付いた。森で走って逃げる時に落としてしまった。
もう1度窓から外を見下ろすと、シャルールの隣にイグニスの姿が見えた。イグニスに頼めば靴を用意してくれるだろう。
窓を開けた。
ふっと何かが入り込んでくるような、温かい風が入り込んで来た気がして振り返った。窓の方に向き直ると町の入口に頭までマントをかぶった2人組みが立っているのが見えた。
誰だろう。僕を追いかけている人だろうか。
外から見えないように外を伺っていると、兵士が数人駆け寄って、その後にシャルールとイグニスの前へとやってきた。
頭に被っていたフードを取ると、輝くばかりの銀糸の髪の青年がシャルールの前に膝を着いて、頭を下げた。
話し声は聞こえないがシャルールはイグニスと話をすると2人の青年を連れて向かいの宿へと入って行った。
窓から顔を出すと、兵士たちは作業を続けていた。
「ディディエ。夕飯の時間ですよ」
部屋がノックされてイグニスが顔を出した。
「はい。ありがとうございます」
返事をして椅子から立ち上がった。
「ずっと椅子に座っていたのですか?」
「なんだか落ち着かなくて……あの、すいません。靴が無いんですが……」
「ああ。あなたの夕飯はここに運ばせるから、その時に靴は持ってくるよ」
イグニスは、他に困っていることはないかと尋ねた。僕はさっきやってきた2人組みついて聞いた。
「あの2人はこの先にある湖からやってきた使者です。しばらく同行することになりましたから、明日の朝食の時にディディエと共に兵に紹介します」
「僕を捕まえに来たんじゃないんですね?」
「違いますよ。安心していなさい」
イグニスは微笑んで部屋を出て行った。
夕飯は部屋に運ばれてきて、靴も貰うことができた。外からは夕飯が宴会に変わり、にぎやかな声が遅くまで聞こえていた。
真っ白な清潔なシーツの敷かれたベッドは落ち着かなくて、部屋の隅に布団を一枚被って丸くなって眠った。なかなか寝付けず、ウツラウツラしては目が覚めてしまった。
朝早くにイグニスが呼びに来て、昨日よりはましになった足を引きずりながら外に用意された食堂へと連れて行かれた。
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