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逃亡
「謝ることじゃない。アウルムの採掘場の視察にシャルール様がやってきてそこの採掘場を……奴隷ごと買い取ってくれたんだ」
奴隷ごと買い取るって……シャルールは何者なのだろう。一国の兵士が鉱脈を買い取るほどの財を持っているとは思えない。国益のために購入したのだろうか。
「それで、そこの奴隷をエクスプリジオンの国民として受け入れてくれた。この傷はシャルール様が消してくれたんだ」
だから火傷の痕のようになっているのだと理解できた。
「俺たちはシャルール様にとても感謝している」
ガジューは空になったバケツを両手に持って、「そろそろ朝食の時間です」と笑った。
すぐ後ろに付いてガジューと一緒に馬小屋を出る。
「もし、ディディエに……奴隷印があるなら、シャルール様に……」
ガジューはとても言いにくそうに小声で言ったけど、「亡命できて仲間と再会できたらそうしてもらう」と返事をした。
そう。僕の身体にも奴隷印がある。
それだけじゃない。
仲間と再会してもきっとシャルールには頼まない。決して人に肌を見せることはしないだろう。
馬小屋を出ると、イグニスがこっちに向かって来るところだった。
朝食を済ませると、シャルールが兵に今日の予定の指示を出していた。
ここに来て2日。スオーロとの境にある湖へと発つ事になった。野営地を撤収する兵を残して、シャルールとイグニス、そして僕は先発隊と共に出発することになった。
フェルメは方向が逆なため、ここで別れる事になった。
フェメルと別行動と聞いて、少しほっとしてしまったことに罪悪感に苛まれた。
湖まではここから馬で2日ほどかかり、途中は野宿。湖まで行けばフェメルの仲間たちがいると聞いた。
スオーロと休戦地帯の境にある湖は世界の水源と言われていて、容易に近づける場所ではない。
今回シャルール達が調査に行くのは、エクスプリジオンに流れている水質の悪化の原因を探るためだと聞いた。
これまでと同じようにイグニスと一緒に馬に乗り、数人の兵と一緒に出発した。
「イグニスさん、フェメルさんの仲間というのは……森の杜人ですよね?」
「そうですね。数人の有能な杜人たちによって水源は守られています」
その杜人たちはフェメルと同じように奴隷を嫌っているのだろうか。
そういう人たちばかりのところにはあまり行きたく無い。
「何か不安なことでも?」
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