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逃亡

 しばらくしてシャルールたちのところに戻ると、シャルールは若干顔色は悪いものの、先ほどよりは良くなっていた。 「何が原因でしょうか?」  イグニスは訝しげにシャルールに聞いているが、シャルールは首を傾げて、「さぁ、俺にも分からない」と返事をした。 「いつもよりも疲労が早いんですよ。いつもは湖に着くまでは大丈夫なんですけどね」  イグニスはシャルールの疲労がいつもより激しいと教えてくれた。 「湖に着けば森の杜人に癒してもらいましょう」  イグニスはサラエに跨ると、僕に手を伸ばして馬に乗せてくれた。  シャルールは兵に合図をして列を組みなおすと馬に乗り、先頭を進み始めた。  長い道のりを進むため、馬を走らせることはしない。木々の間の獣道を進むそれは、眠気を誘う。 「ディディエ? 眠たいのですか?」  後ろから僕を抱き支えるようにして馬に跨っているイグニスに問われて、「……ちょっとだけ」と返事をした。 「あまり眠れていないようでしたね」  馴れない場所での寝泊りにどうしても熟睡することはできなかった。 「私が支えていますから眠ってもいいですよ」 「でも……」  馬を操りながら僕を支えるのは大変だろう。 「シャルール様だけでも大変なのに、あなたまで倒れたら大変ですから、寝てください。私は大丈夫です。ここは森の杜人の領域ですから」  寝ていいと言われて人の腕の中で眠るなんてとしばらく戸惑っていたが、馬の進む心地よいテンポにいつしか眠りに落ちていた。

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