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龍神の杜人

「うわぁ……」  青く澄んだ大きな湖は向こう岸は霧で覆われて全貌を見る事はできない。突然視界が開けて、白い河原が広がって湖が現れた。  馬から降ろされてその水辺に寄った。 「ディディエ。あそこが森の杜人が守っている水源です」  イグニスが指差した先には白い大きな宮殿が建っていた。でも、その先に見えるものに目を奪われた。 「アレは、なんですか?」  指差したものは、白く大きな龍だ。  岸壁に掴まって今にも飛び立とうとしている。 「あれはこの湖の守り神です」 「守り神……」  口を大きく開き、広げた翼が身体の倍ほどもある龍。 「伝説によると石化した龍だと言われている」  シャルールがすぐ横にやってきて、腰に差した剣の柄を見せてくれた。 「龍神の杜人と龍は共にある存在だ。俺は見たことは無いが、この世界にも昔は龍がいた。龍神の杜人はその龍と共に生まれ、あり続ける」 「じゃあ、あの龍は?」 「誰かが造ったものという記述も無いし、調べても何で造られているのかも分かっていない。数代前の龍神の杜人の片割れなのかもしれないな」  共にある存在。 「森の杜人はこの湖の底に卵が眠っているかもしれないと言っていましたね」 「ああ。だが調べられないのだから仕方ないだろう。憶測ばかりが飛び交っている」  湖の底に卵……。龍とはそんなにたくさんいるのだろうか。 「ディディエ、私たちは宮殿に行きますが、どうしますか? ここにいますか?」  宮殿まではすぐそこだ。森を少し迂回するが、ここからその道も見えている。 「少しだけここにいます」 「宮殿の外に兵士たちもいますし、馬もいますから宮殿に来たら声をかけてください。暗くなる前に来てくださいね」  頷くとシャルールとイグニスは兵を連れて宮殿へと向かって行った。  きっと、イグニスは話したことを覚えていたからだろう。フェメルの仲間と聞いて気が重くなっている。  1人ほとりに残って静かな湖面を見つめる。

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