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龍神の杜人
「乾かしてやるから貸せ」
服を引っ張られるが、シャルールの側から逃げた。
「お前、本当に男か?」
シャルールの眉間に皺が寄る。この間もそれを言われた。
「お、男です」
「じゃあ、何も恥ずかしいことは無いだろう?」
そういうことではないのだ。
「……は、恥ずかしくは無いですが、い、嫌です」
シャルールは呆れたように小さくため息を吐くと、「じっとしていろ」と言って右手を上げた。
「うわぁ」
ボウッっと炎が上がり、それは鳥のような形になると僕に向かって飛んできた。
「動くな。じっとしていろ。燃えるぞ」
両腕を前にして肩を上げてじっとしていると、炎でできた鳥は僕の周りをグルグルと回った。
「両腕を広げろ」
恐々両手を広げると、鳥はなおも近づいてグルグルと回った。しばらくすると鳥は小さくなって、シャルールの手の中に消えていった。
「そ、そんなこともできるんですか」
濡れていた服は殆ど乾いた。そして、水で冷えていた身体はぽかぽかと暖かい。
「これくらい造作も無い」
シャルールが自分の濡れた服に手を当てるとそこから蒸気が立ち上った。そして洗濯物を干すようにパンパンと服を振るとさっと着込んだ。
「それで乾いたんですか?」
「ああ。問題ない」
シャルールのシャツを触ると自分の服と同じように暖かかった。
「髪まで濡れてるぞ」
シャルールが濡れそぼった僕の髪をワシャワシャと撫でる。乾かしてもらったシャツと同じように髪が温かくなってすぐに乾いた。
「便利ですね」
そう言うとシャルールは笑って、「そうだな」と答え、「宮殿に戻ろう」と僕を促した。
「そろそろ戻らないとイグニスさんが心配するかもしれませんね」
「イグニスには俺が迎えに行くと伝えてあるから大丈夫だ」
靴を急いで履くと、スレアの元に先に行ってしまったシャルールの後を追った。
スレアに颯爽と跨ったシャルールが手を伸ばした。
「あ、ありがとうございます」
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