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龍神の杜人

 どうしてシャルールはそう思うのだろうか。  能力者として特別な待遇を受けてきたであろうシャルールがどうしてそう思うかが不思議だった。  森の能力者達のように、僕のような奴隷を蔑んでもおかしくはないというのに。  蔑まない方がおかしいとも取れるのに。 「俺は……この能力を疎んでいる。この能力さえ無ければ失わなくて済んだ物が多すぎる」  胸の前で握った拳をさらに強く握り締めて、ゆっくりと手を開くと、そこに青白い炎が浮かび上がった。 「能力があるからといって特別な人間じゃない。家柄や生まれ……いかなる立場にあっても、俺たちは同じ人間であることに変わりは無い」  拳を握り締めると、青い炎はボウッと燃え上がって消えた。  消えた炎を見つめたシャルールの表情は暗く、落ち込んでいるように見えた。  何かあったに違いないとは思ったが、その表情に何も言えなくなった。 「俺は部屋に戻る。朝食の時間に間に合うように来い」  シャルールはそう言って部屋を出て行った。  脇殿の食堂に朝食を摂りに行くと、シャルールとイグニスの姿は無かった。居合わせた兵士に聞くと、何か急ぎの用事ができて宮殿で会議をしているということだった。  食堂には兵士の半分もいないし、落ち着きも無い。皆、入口を伺いながら食事を口にしていた。 「何かあったんですか?」  シャルールやイグニスの急用が関係あるのは明らかで、すぐ隣に座った兵士に尋ねると、「王国で問題があったようだけど、詳しいことはわからない」と教えてくれた。 「ディディエッ」  入口の扉が開くと同時に名前を呼ばれて慌てて、「はいっ」と返事をした。慌てて飛び込んで来たのはガジューだった。ガジューはすぐに駆け寄ってくると、「早馬を出す。すぐに馬場に来てくれ」と僕の腕を取って急かした。  僕は慌てて立ち上がるとガジューの後に続いて食堂を後にした。宮殿の中を早足で進みながら、ガジューに話しかけた。 「ガジュー、何かあったの?」 「詳しいことはまだ何も……だけど、君の仲間が危ない」 「え?」  僕の仲間というのは先発してエクスプリジオンに向かった奴隷たちだ。

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