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龍神の杜人
危ないとはどういうことだろう。数人の兵を伴わせて亡命のためにエクスプリジオンまで送ってくれて行ったはずだ。
「どういうこと?」
その仲間が危ないというのは、途中でスオーロの兵にでも捕まったということだろうか。
仲間と離れてからすでに5日は過ぎている。あそこからならエクスプリジオンまで3日もあれば到着できているはずだ。
「詳しいことは分からないんだ。ただ、亡命は認められないと……」
亡命が認められなければ、国へ返される。返されればどんな仕打ちを受けるか分からない。
逃亡だけでも重罪だ。一生牢獄に入れられ、苦痛を与えられ……。
身震いをして両手で身体を抱き締めた。
馬場に付くと、サラエと3頭の馬が馬場から出されて、数人の兵が待っていた。
「ディディエ。詳しいことは私が調べてきます」
僕の後にすぐに現われたイグニスはそう言うとサラエに跨った。
「詳しいことが分かり次第、こちらに知らせます。あなたはここで待っていてください」
「でも……」
一緒に行きたいと訴えると、「あなたまで囚われることになっては大変です。他の方を救う手立ても探ってきます」と待っているように制された。
イグニスは1人の兵を伴って馬でかけて行ってしまった。
「ディディエがいればもっと詳しく聞けるかと思ったんだけど、ごめん」
イグニスから詳しいことを聞けなかったことにガジューは謝った。
「いいよ。仲間は心配だけど、イグニスさんは知らせてくれるって言ってくれているし、心配してくれてありがとう」
お礼を言うとガジューは小さく微笑んだ。
「こっちは?」
残されていた馬も武具を着けて、嘶きを上げて興奮していた。
ガジューは馬を窘めるように撫でる。
「エクスプリジオンに戻る早馬だ。国の動向を探りに行くと……」
「エクスプリジオンで何か起こっているの?」
奴隷の亡命を受け入れ、他の国に対しても友好的な姿勢を保っているエクスプリジオン。先に亡命の為に兵に付き添われて行った仲間の受け入れが出来ず、国の動向を探りに行くとはどういうことだろうか。
何かが起こっていると思わざるを得ない。
「何かが起こっているんだろうな」
ガジューの表情は暗い。
朝食を終えた兵達が次々と馬場に集まってくる。
「朝礼はここで行われる」
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