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彼の地へ
遠く離れていく龍の石像。胸を張り、大きく翼を広げた龍は叫ぶように口を開き、岸壁を掴む足には鋭い爪が食い込んでいる。
兵たちは数人ずつに分かれて、合流地点であるアウルムに別の道を使って向かう。
シャルールが徐々にスレアの速度を上げて行く。僕はシャルールの後ろを追う馬に兵士と一緒に乗せてもらった。
後ろ髪を引かれる思いで何度か振り返ったが、龍は離れていくばかりだった。
途中で先にエクスプリジオンに行っているイグニスと合流することになっている。そこで仲間のことや国の内情についても聞くことができる。
ここにいる兵士は皆、国王兵団。国王を守るための兵だ。国王の死去を聞いて動揺しないはずが無い。シャルールは兵長だ。垣間見た表情は険しく、眉間に皺が寄っていた。
声をかけようにも何と言っていいか分からず、戸惑うばかりだった。
「シャルール様はかなり焦っている。この速さで走り続けたら、スレアは大丈夫でも、他の馬は疲れて最後まで持たない」
「シャルールにスピードを押えてもらった方がいいかな」
「そうだな」
兵士はシャルールに追い付こうとスピードを上げた。
「シャルール様っ」
声にシャルールは振り返った。
「スピードを少し落としてください」
シャルールは僕たちの後ろを付いてくる兵を振り返り、片手を上げて合図をするとスレアの手綱を引いた。
少しだけスピードが緩み、後ろの兵たちも追い付いた。
荷物を乗せた馬もいる。気が急くのは仕方ないが、馬が止ってしまっては先に進めなくなってしまう。
それに、癒しの力を持つイグニスも不在だ。
森の中の道なき道を馬を走らせる。先頭を進むシャルールは剣を振り、枝や蔓を落としながら進んで行くが、鬱蒼とした森の中でそれは一部でしかない。
馬のスピードと相まって、腕や足に当たると簡単に傷ができる。兵たちは軽装とはいえ武装している。僕も同じものを着せられてはいるが、馴れない防具の重さと馬の振動にすぐに疲れてしまった。
「ディディエ。姿勢」
何度も注意されて、姿勢を直すが重さでどうしても前のめりになってしまう。
姿勢を崩すと馬への負担も、自身への負担も大きくなってしまう。
数時間走り続け、日が高くなった頃シャルールが兵を止めた。
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