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彼の地へ

「ここでしばらく休憩を取る」  シャルールはスレアを木に結びつけると、片手を上げて小さな火の鳥を作り、森の奥へと飛ばした。 「イグニスへの伝書鳩代わりだ」  シャルールはそう言うと、着ていた防具を脱いだ。僕も防具を脱ぎ、ようやく重さから開放された。周りの兵たちも防具を脱いで、馬から鞍を降ろしていた。 「昼間に移動すると目立つからな。少し日が翳ってから先に進む」  兵士たちは言われなくても心得ているのだろう。シャルールが指示を出すより先にそれぞれに休憩の準備をしていた。 「重かったのか? 赤くなってるぞ」  シャルールが防具の重さで擦れて赤くなった肩を指差した。 「重たいですね」  こんなに重たいものだとは思わなかった。シャルールや兵士たちはこれを着て、馬を操り、剣を振るのだから日ごろの鍛錬が知れた。 「これはまだ軽いほうだ」  馬に揺られたせいもあって、肩には赤く擦れた傷ができていた。 「ちょっと待っていろ」  シャルールは他の兵士のところへ行くと何か話をして、僕を指差し、小さな箱を受け取ると戻って来た。 「そこに座れ」  指差された木の根元に座ると、シャルールがすぐ横に座った。手に持っていた箱は救急箱だった。 「じ、自分でします」  シャルールの手からその箱を取り上げると、急いで立ち上がった。  肩を治療するとなると、服を下げなければならない。服を下げれば見られるかもしれないと慌てた。 「女じゃないんだからそれくらい大丈夫だろう」  服の肩を押さえたことで、シャルールは僕が肌を出すことを嫌がっているとすぐに察した。 「そ、そんなんじゃないです」 「背中まで傷があるのにどうやって治療するんだ?」 「そ、それは……大丈夫ですから……」  背中の方まで見えたのだろうか。痛むのは肩だけで、背中には傷はできていない。あるとすれば、それは……。 「ディディエ。もし、お前の身体に奴隷印があっても、エクスプリジオンに着いたらすぐに消してやる」

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