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彼の地へ

「シャルール様は笑ってたほうがいいです」  シャルールが緊張していると、兵たちも緊張する。眉間に皺を寄せて不機嫌な顔でいられると余計に。  だから、シャルールは笑っていたほうがいい。  シャルールが笑うと安心する。何でも無いように感じられる。 「可笑しなことを言うな」 「何も、おかしなことは言ってません。シャルール様が笑ってくれれば安心します。きっと、僕だけじゃなくて、周りの兵士たちも……だから、笑って下さい」  困難な時期だからこそ、安心感を与えて欲しい。焦って馬を飛ばす気持ちは分かるけど、それでは兵たちも不安が募る。 「分かった。善処する」  シャルールはもう1度僕の髪を撫でると、「俺は兵を見舞うからお前は他の兵と一緒に離れで休め」と言った。 「僕も一緒にいます。僕は何もできないし、戦うことも馬を操ることもでき無い。力になれるか分からないけど、側にいさせてください。雑用でもします」 「わかった」  シャルールは頷くと戸を開けた。  ヴァレンが兵に加わり、負傷した兵を村の親戚に預けて、早朝に出立した。  馬を迎に戻り、森を駆けて野宿を2日ほどして、ようやくイグニスと再会できた。 「よく、無事でしたね」  再会したイグニスに頭を撫でられると、「子ども扱いだな」とシャルールに笑われた。 「何であなたがここにいるんですか」  ヴァレンと向き合うなり、イグニスは機嫌が悪くなった。 「医者が必要だろうから付いて来てやったんですよ。礼ぐらい言ったらどうだ?」  ヴァレンは腕を組んで顎を上げる。イグニスは、「国には優秀な医者が沢山います」と言い返した。 「ここにはいないだろう? 誰が兵を治療できるんだ?」と言い返した。 「イグニス、ヴァレン。いい加減にしろ」  シャルールがいがみ合っている2人を引き離して、「まずは報告が先だ」と言って地面に地図を広げた。  僕は他の兵士たちと一緒に馬の世話をして、イグニスから仲間の様子を聞けるのを待っていた。  既に辺りは暗くなってきていて、兵士たちと一緒に野宿の準備をはじめた。 「慣れてきたなぁ」

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