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彼の地へ
頭を撫でる時以上に熱を感じる。
火の杜人だからだろうか。シャルールの手はいつも熱い。繋がった手からその温もりが伝わって来て、胸まで熱くなる。
繋がった手をより意識してしまう。
強く引かれて腰より高い草木に足を取られて何度も転びそうになる。その度にシャルールは強く握る。
「手を、手を離して下さい」
「転ぶなよ」
口端をあげてからかう様にそう言って手を離してくれた。
その笑った顔に胸が大きく跳ねて、さっと俯いた。
兵達のいる場所に戻ると、すっかり野宿の準備は整っていた。
シャルールはイグニスと数人の兵を呼んで作戦を話し合っている。
水の宮殿へは既にエクスプリジオンから護衛の兵が出発し、エクスプリジオンでも戦いに向けて軍備を整え始めているということだった。
緊張が高まっているのを感じる。一緒に行動している兵士も緊張して、これまでよりも口数は少ない。
いくつかに分かれてスオーロに向かっている兵達は無事だろうか。
スオーロに囚われた仲間も無事だろうか。
不安は募るばかりで、木の根元に丸くなり、毛布を被っても眠気は訪れない。
暗闇の中から風に揺れる木々や葉の擦れる音が聞こえ、時折鳥の鳴き声が聞こえる。ランプや松明も消されて、見上げた空もどんよりと曇っていた。
「ディディエ」
シャルールの呼ぶ声が聞こえて、毛布を捲り上体を起こした。
「寒くないか?」
話し合いが終わったのだろう。シャルールが自分の毛布を広げながらすぐ横に座った。
「寒くは無いです」
寒さよりも不安が大きい。負傷した兵士を目の当たりにして、次は自分や仲間じゃないかと恐怖を感じる。
「俺は熱い……」
確かにシャルールがいる側が暖かい。シャルールは言いながら胸に抱き込むようにして僕を元の位置に押し倒した。
「ちょっと、シャルール様っ」
「お前は冷たくて気持ちがいい。俺の熱を冷ましてくれ……」
抗いを押えるように強く抱き締められた。
「興奮して眠れそうに無い」
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