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彼の地へ

 昨日も一昨日も近くで寝たが、こうして抱き締めてくるようなことは無かった。イグニスと合流して、エクスプリジオンのことやスオーロに囚われた兵のことを聞いてシャルールも緊張が高まっているのだろうか。  眠れないほどに高揚しているのだろうか。 「シャルール様は暖かいですね」  僕には安心感を与える温もりを、シャルールには高揚を押える冷たさを。僕はされるがままシャルールの腕に身を預けて目を閉じた。 シャルールを中心にイグニスとヴァレン、兵士8人でアウルムへと早朝に出発し、2日かかってアウルム国に入った。  水源である元ブルーメンブラッドから遠く離れ砂漠が多いアウルムは日差しも強い。シャルールは火の杜人でブルーメンブラッドのように力を抑制されることはなく、逆に力が増し、鋭気に満ちていた。  アウルム国はスオーロ国と隣接しているため、多くの鉱山で奴隷が使われている。 「あそこが国王の住む宮殿だ」  シャルールの示した場所は大きな山の斜面を背にした大きな城だった。国に入ってしばらくして、壁を越えてアウルムの警備兵に伴われて城へと向かった。 「馬をお預かりします」  壁に囲まれた首都からさらに城壁を越えて大きな木でできた門の前で、乗っていた馬を警備兵に預けた。  シャルールはかぶっていた兜を脱ぐと、赤いマントを身に付け、手袋も新しいものへと付け替えた。イグニスも同じように深い緑色のマントを身に付けた。  警備兵の後ろから、数人の兵がやってきて、シャルールから兜や甲冑などを受け取った。シャルールと同じようにマントを身につけてはいるが、これまでの兵と同じエクスプリジオンの紋章が入った剣を腰に身に付けていた。  どうして新たな兵がここにいるのだろうと不思議に思って、回りを見渡した。 「あそこを見ろ」  城に入る前に、シャルールが今登ってきた斜面の下、城壁の外を見るように言った。  そこには何千もの兵士が集まっていた。シャルールと一緒にここまで来た兵士たちと同じ甲冑。 「あれは、エクスプリジオンの兵ですか?」 「ああ。スオーロからの進撃に備えている」 「ディディエ。あなたはヴァレンと一緒に兵たちと合流してください」  イグニスに言われて、「分かりました」と返事をすると、ヴァレンと一緒に下に見えた兵達の元へ向かった。 「ヴァレンさん。本当に戦いは始まってしまうの?」

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