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彼の地へ
斜面に沿うように設けられた石の階段を降りながら前を行くヴァレンに尋ねた。
「間違いなく戦いは起きる。すでに小さな小競り合いが始まっている」
「……戦いをしなくて済む方法は無いの?」
「シャルもその方法を模索しているが、これまで何度もスオーロには裏切られてきているからな」
停戦を打ち破り、ブルーメンブラッドを落とし、奴隷とした。休戦地帯を無視することも度々……。スオーロは隙があればあの水源を手に入れようとしているのは目に見えている。
あそこをスオーロに取られれば、世界を制圧できる。
水が無ければ生き物は生きていけないのだから。
「スオーロを落とし、奴隷を解放し、エクスプリジオンが全てを統治すれば……全てがうまく行くと思うか?」
階段を降りるとヴァレンが振り返った。
「戦いは正義じゃない。それで苦しむ人達もいます。エクスプリジオンの王は……とても慈悲深い人だと聞いています。それが本当なら、きっと、うまくいくと思います」
逃げ出し、救いを求める奴隷たちを受け入れてくれる。奴隷を助けてくれようと尽力してくれているのだから。
「エクスプリジオンの王は有能だよ」
でも、その王が今はいない。
「王は……無事だったでしょうか?」
ヴァレンは首を横に振った。
死去としか聞かされていない。病なのか、暗殺なのか。
新たな王はまだ推挙されていないとシャルールは言っていた。あれから数日経つ。もう次の王は決まったのだろうか。
「新たな王の座に着けば、世界は変わる。この戦いに負けるわけにはいかない」
ヴァレンはそう言うと、「気を引き締めろ。今日、明日にも戦は始まる」と小さな声で僕に言った。
ヴァレンは沢山の兵の集まった広場に着くと、「シャルール様からの指示を伝える」と言って兵達の編成とそれぞれの待機場所を指示した。
ヴァレンの前に赤い髪の男と銀の髪の男が数人集まった。
エクスプリジオンの火の杜人と森の杜人だ。
シャルールと同じ赤いマントを身につけている。
銀の髪はイグニスと同じ、森の杜人。甲冑は身に着けておらず、ヴァレンと同じように麻の衣服を身に着けていた。
ヴァレンは、「シャルール様は今、調印を行っている。それが済めばすぐにエクスプリジオンへの同行をお願いします」と頭を下げた。
「それではここはどうしますか?」
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