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彼の地へ

「ここは私とイグニス様が仕切ります」  ヴァレンが言うと、「杜人も無く、戦を始める気か?」と詰め寄られた。 「シャルール様の身の安全が優先だ。ここにシャルール様が居ることは敵にも知られている。シャルール様がエクスプリジオンに急いで帰ることもだ」 「しかし……」 「ここからエクスプリジオンまでは1日だ。前王の死去を開示し、新王を示さねばならない」  ヴァレンがそう言うと、「我々が付いていけば余計に敵を煽ることになるのでは……」と赤い髪の男が心配そうに告げる。  国王兵団の団長が国に帰るだけなのに、何故敵はそこを必死に狙ってくるのだろうか。  シャルールが要人であることは分かっているけど、この火の杜人を連れて、身を守らなければならない程のことなのだろうか。  シャルールの兵団の兵士と僕の仲間の奴隷が囚われて、新王からの任命を受けなければ、あの手紙に意味が無くなるとシャルールは言ったけど、それは代理が受理すればいい。  ここにいる火の杜人も要人だ。  シャルールはそんなに偉い人物なのだろうか。 「兵達を守るために、敵の目をシャルール様に向けさせる。エクスプリジオンにさえ辿り付けばいい。エクスプリジオンで新王の命を受ければすぐに挙兵できる」 「分かりました。全力でお守りします」  火の杜人達は頭を下げてそう言った。森の杜人達は、「私たちはヴァレン様と一緒にここで兵の介抱をいたします」と頭を下げた。 「ディディエは、シャルールと一緒にエクスプリジオンに向かえ」 「えっ?」  驚いて聞き返した。 「ここは戦場になる。エクスプリジオンにさえ付けば安全だ。ここの民の大半は既に鉱山やエクスプリジオンに非難させてある」  そう言われれば、この国に入ってから数人の国民しか見ていない。 「それに、シャルがお前を連れて行くときかないからな」 「シャルール様がですか?」 「随分と気に入られてるな」  ヴァレンは意地悪く笑うと、「支度に行くぞ」と言って火の杜人達と一緒に石造りの建物に入った。  薄暗い廊下を進み、木製の扉を開くと中には甲冑や武器がズラリと並べられていた。 「ディディエはこれぐらいがいいだろう」  ヴァレンが選んでくれた軽装の甲冑を身に着ける。 「これなら肩も痛まない。それと、これを持って行け」  ヴァレンは肩から下げていた革鞄の中から小さな細身の小刀を取り出した。

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