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彼の地へ
「シャルール様が無事に国に戻られれば国を動かすことができる」
今もこれだけの兵を動かしているシャルール。
エクスプリジオンにはまだ兵が残っている。その兵をも動かしてスオーロと戦いをしようとしている。
「戦わなくて済む方法はもうないの?」
「これまで何度も考慮して手を尽くしてきた。湖を占拠された今、それを奪い返し、スオーロの脅威を打ち破らなければならない」
この戦いに勝たなければならない。
「もし、負けたら……どうなるの?」
「エクスプリジオンもアウルムもスオーロの配下に落ちる。国王も国民も兵士も……奴隷にされるかもしれない。指揮しているシャルール様は罪人にされて幽閉もしくは処刑される。なんとしてもこの戦いに勝たなくてはならない」
ガジューが強く拳を握り締めている。
「シャルール様は言ったよ。自分を信じろって。信じてくれれば俺は強くなれるって」
だから、僕にも信じろとシャルールは言った。
「もちろん俺や国民、兵士だってシャルール様を信じている。信じて着いて来た。シャルール様は我々エクスプリジオンの導師だ」
ガジューは顔を上げて、「俺たちは絶対に勝つ」と握り締めた拳を胸の前に振り上げた。
「僕も、シャルール様を信じるよ」
城壁に囲まれた首都。見上げた城の後ろには崖があり山となっている。この山の向こう側は砂漠と鉱石の採掘場があり、その向こうがメリエンダだ。
ガジューと共に馬に鞍を着けたり、水などの荷物を詰め込んだりしながらシャルールが来るのを待っていた。
顔を上げるとの、「スオーロの兵だっ」という叫び声は同時だった。
突然のことに驚いて周囲を見渡すが、声が聞こえたと同時に駆け出し、城壁の上に向かっていた。ガジューだけは、「ここでじっとしていろ」と後を追おうとした僕を制した。
たくさんの足音と声が四方から聞こえる。甲冑があたる音、剣がぶつかる音。
まだ戦が始まったわけでもないのに一気に緊張が高まった。
すぐ横にいたスレアがその怒号に不安そうに声を出した。
「スレア……大丈夫だよ。すぐにシャルール様が来るから」
鼻先を抱き締めるようにして撫でるとスレアは鼻を鳴らした。
「ディディエッ、シャルール様が来たらすぐに出る」
置いていた兜をかぶるように言われてそれを頭にかぶった。
今、ここで戦が始まろうとしているのに。
「エクスプリジオンの兵達は優秀だ。皆を守るためにも早々にエクスプリジオンに向かわなければ」
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