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彼の地へ

 木の蔦に掴まって木に登っている男が槍先をシャルールに向けている。  振り返ると数人の男たちに囲まれていた。 「スオーロの駐屯部隊か」 「お前らなんかすぐに捕まえてやる」  先に地面に降り立った男が剣を振り上げて飛び掛ってきた。対峙したゲイルが剣で跳ね返した。シャルールが手をかざすといくつもの炎が辺りに広がり、明るく照らした。  さっと見渡すと襲撃してきたのは5人。炎はすぐに消えた。 「ディディエッ、俺から離れるなよ」  赤いマントを翻すと僕をその中に引き寄せた。ガチンッと鎧同士のぶつかる音がした。 「お前がシャルールだなっ」  長い槍がシャルールめがけて突き入れられる。腰から剣を抜いたシャルールがその剣先で跳ね除ける。槍を持った男の横から剣を持った男が襲い掛かり、シャージュがそれを剣で受け止めると、「シャルール様っ、ここは我々が」と言って指先から炎を出すと、男に向かって投げた。 「うわぁああっ」  炎に包まれた男が地面に転がった。  シャルールが腕を強く引いて、スレアの手綱を握ると馬に跨って、僕も上へと引き上げ、フワリと広がったマントの止め具を剣で落としてマントを脱がせた。  その剣を振り回すと、襲ってくる男を切り裂いた。  兜の上に吹き上がった血が飛び散り、強く目を閉じたが、瞼の上を熱く感じるほどの血が流れ落ちて行った。  暗闇の中に響く断末魔と剣と鎧のぶつかる激音。地面に叩き付けられる音と馬の嘶き、草を切り裂く音……八方から聞こえる音に耳を塞ぎたくなった。 「前を見ていろ」  シャルールは言いながら、スレアの手綱を強く引いて叩き付けた。途端に走り出したスレアに慌ててしがみ付いた。  襲ってきた敵は5人しかいなかったようで、追いかけてくる気配はない。  シャルールは大分進んでから、スレアの手綱を弱めて、首を回すとスレアの顔を後方へと向けた。  暗闇が来た道を隠して、どれほど進んだのか分からない。それに、声や人の気配も全く感じなかった。 「シャルー……」 「先を急ごう」 「少しだけ、待って……」  すぐにシャージュ達が追いかけてくるかもしれないじゃないか。 「先を急ぎ、エクスプリジオンに一刻でも早く着く事が奴らの願いだ」

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