78 / 167
彼の地へ
「お前がやりたいなら好きにすればいいが、イグニスが許さないと思うぞ」
「イグニスさんが?」
仕事をするのにイグニスの許しが必要なのか。
「ああ。そんなことさせられないと、小言を言われるぞ」
「…………」
シャルールに握られた手をじっと見つめて、赤い髪とそのマントを改めて見直した。
絢爛豪華なその衣装は国王兵団の団長の衣装にしては派手すぎる。ブルーメンブラッドの正装もスオーロの正装も見たことは無いし、王を見たことも無い。だけど、シャルールが今着ているものはそれに匹敵するものだろうと……理解できた。
「シャルール様は…………誰?」
「は?」
今度はシャルールがおかしな声を上げて、眉間に皺を寄せた。
「国王兵団の団長で、国を守る火の杜人で……」
武芸に長けて、部下思いで、国民を思い、優しくて……。
「エクスプリジオンの次期王位継承者だ」
膝をついたまま見上げてシャルールは言った。
「王位継承者?」
それって、シャルールはこれから国王になるってことだろうか。
アウルムからここに急いで来たのは、亡くなった国王の後を継いで、国を治め、スオーロに送った手紙の署名を有効にするためで、国王兵団をまとめて、スオーロを叩き4国をまとめるため。
「そうだ」
ともだちにシェアしよう!