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総失

「そう、誓ってきた。だが……お前は俺に笑えと言った。荒んでいく俺が笑えるはずもないのに」 「シャルール様は荒んでなんて……」 「戦いを強いられ、国を背負い、業火を燃やし……愛することもできない」 「でも、シャルール様は国や国民を愛しているのでしょう?」  だからこそ、兵を率いて戦っている。  4国に分かれて戦を繰り返しているこの国を作り変えようとしている。  数日間一緒に過ごしてきて、シャルールがどれだけ兵を大事にし、国を大事にしているか理解できた。そのシャルールに答える兵士の態度や言動からも敬われていることが理解できた。  僕だって、シャルールを信じ、慕っている。 「シャルール様が愛せないはずがない。みんながシャルール様を慕っているのは、シャルール様が愛してくれているのを知っているからです」  だから、それに応えようとしている。  だからこそみんな戦っている。  何千もの兵士は戦っている。  シャルールを信じて、慕って、応えようとしている。 「シャルール様は言いましたよね。『イグニスや兵、国は俺を信じている。俺はそれに応えなければならない。それが俺を前へと押し進める。俺はもっと、もっと、強くなる。だから、お前も俺を信じて着いて来い』って、だから、僕は信じてシャルール様に着いて来ました。シャルール様は愛せないんじゃない……」  その能力で失うことが怖いんだ。  下がった分を前に進んだ。  跪いたままのシャルールを見下ろして、その赤い髪に触れた。  自分からシャルールに触れたのは初めてだ。  誰かに手を伸ばしたこともない。  欲しがったこともない。 「僕だって……人を愛せるか分らない」  今まで、虐げられ、忌み嫌われて生活してきた。自分の欲を押し殺し、ひれ伏すことで生きてきた。  自分から欲しがるなんて、欲しいと思うことなんて許されなかった。  好きな物なんて、許されなかった。  好きという感情も許されなかった。  だから、僕は『好き』も『愛』も分らない。  シャルールを想う気持ちが、好きとか、欲しいということなのか、自分の感情であるはずなのに、分らない。  だけど、シャルールやイグニス、ヴァレン、兵士たちが『愛している』のは理解できる。

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