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総失
水が枯れないのは龍神の杜人が生き残っている可能性があるからだ。
スオーロが水の宮殿を占拠してしまった今、水源を絶たれてしまえば、国民は飢えてしまう。
エクスプリジオンはまだ大丈夫かもれないが、砂漠地帯の多いアウルムはすぐに水が枯れるだろう。
この大戦の勝敗に時間がかかればそれだけ、こちら側は不利になる。水が枯れれば国民は飢えてしまう。
戴冠式の後のシャルールの指揮では短時間で終わらせることが重要だと言っていた。
スオーロは長引かせるつもりでいるだろう。降伏を狙って。降伏なんてしたら、どんな条件をつきつけられるか……。
スオーロの大群がアウルムにすでに攻め入っている。シャルールと1日かけてエクスプリジオンまで来たが、すれ違いにエクスプリジオンの兵たちがアウルムに応戦に向かっている。
ここに残された兵はわずかだ。元ブルーメンブラッドの水の宮殿を挟んだ先にスオーロはある。水の宮殿からエクスプリジオンまでは2日以上かかる。スオーロからは隣接するアウルムを落とし、そこからエクスプリジオンを攻めた方が得策だ。
スオーロの金白の杜人の能力は戦略に長けた知能としか分っていない。能力者であることを隠し、他国に入り込んでいる杜人も多いようだ。その能力は未知なのだ。
攻撃の能力に長けているのは火の杜人でも、腕力や体力などはアウルムの土の杜人の方が勝っている。森の杜人は回復させる能力は高くても、時間が必要だ。
その能力には長所と短所があるのだ。
エクスプリジオンには火の杜人が多く、攻撃性に優れてはいても、接近戦での剣などを使った勝負では土の杜人には勝てない。
エクスプリジオンはアウルム国のように塀に囲まれてはいない。緑に囲まれ、城壁も無く、街の中心に城が建っていて、この部屋から森が見え、そこから先のブルーメンブラッドに続く休戦地帯まで見ることができた。
窓に近づいて、そこから続くバルコニーに出ようと手をかけた。
ふっと気が付いた。
森の中で時々キラッと小さな物が光った。
光ったところに目を凝らして見ても木々に覆い尽くされて何かは分からない。じっと見ていると、他の場所が光る。
城を囲った街からも遠く離れていて、分からなかった。
『コンコン』
ノックの音がして振り返った。
たが、森のほうが気になって、「はいっ。どうぞ」とおざなりに返事をした。
「ディディエ様。シャルール様が……」
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