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総失
「あの、あそこの森に、何か光るものが……」
入口に立って中に入ろうとはしない兵士に窓の外を指さして伝えた。
「光る物ですか?」
「時々ですが、あちこちで光るんです。小さな光なんですけど」
兵士は疑問に顔を顰めると、「失礼します」と言って部屋の中に入り、窓へと寄った。
「あの遠い森ですけど……小さく光が見えました」
指さした辺りをじっと見つめる。
「何度か光ったんですけど、同じところが光るわけではなくて」
兵士は指さした森のほうをじっと見つめる。
僕が説明している間も、聞いているのかいないのか、集中しているようでじっと森に目を凝らしていたが、「報告ありがとうございます」と言って踵を返すと急いで部屋を出て行ってしまった。
なんだったんだろう。
それに入って来た時にはシャルールがって言ってたのに。
呼びに来たんじゃなかったんだろうか。
兵士の後を追って部屋の扉を開けて廊下へ出た。人はいないものの人の気配は感じる。外からは馬の嘶きや兵士たちの声が聞こえている。城内中がざわざわと落ち着きのない雰囲気に包まれていた。
誰もいない廊下はまるで、その喧騒から取り残されているようにも感じられた。
いくつもの扉が向かい合わせに並んだ廊下の先には天井まで続く上下に分けられた大きな窓があった。下の窓は開ければ外のベルコニーに出られるようになっていて、上の窓は色とりどりのガラスで絵が描かれていた。
下の窓から外を見ると、先ほどまでいた部屋とは違う景色が広がっている。
城を取り囲む街のその先は森が切れて、岩ばかりが目立つ山が続いていた。その先はアウルムだ。そこからシャルールとともにここにたどり着いた。道は見えないが、その山をじっと見つめても森の中に見えた光は見えなかった。
アウルムは今、どうなっているのだろう。
襲撃とともに出立してきて、あれから2日以上経っている。加勢の兵が向かって行ったけど、戦況の報告はまだない。
イグニスやヴァレンは無事だろうか。
廊下の先にある階段を数人の兵士が急いで登っていくのが見えた。その中にはさっき部屋に来た兵士もいて、急いで兵たちの後を追った。
城の端に設けられたその階段は、部屋に案内された豪華な階段とは違い、すれ違いができる程度の細い階段だ。絨毯や装飾なども無く、むき出しの石が積み上げられている。兵たちの足音を追ってその階段を登っていくと、木戸にたどり着いた。
兵たちが飛び出した後で、施錠はされておらず、押せば簡単に開いた。
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