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総失
「なんで。僕もここにいます」
急に部屋に戻るように言われて慌てて断った。
部屋でじっとなんてしていられない。落ち着いてなんていられない。
足手まといでも、少しでも役に立てることがあれば、動き回っていたい。
「しかし、それでは我々がシャルール様にお叱りを受けます」
それは、シャルールが僕を部屋に閉じ込めているように命じたからだろうと、すぐに理解した。
「シャルール様は今どこに? 僕が直接言ってきます」
「そのようなことは許されません」
シャルールは国王となった。だから、僕なんかが気軽に話しかけていい相手ではないということだ。
「シャルール様への報告は僕が行きます」
そう言って、出て行った兵を追いかけた。
「ディディエ様っ」
呼び止める声は聞こえたが、その場を離れられないのだろう、追いかけてくることはなかった。
前を急いで降りていく兵の足音を追って石段を駆け下りる。先ほどまでいた部屋の階を通り過ぎて、さらに下へと。
石段を下りる兵の足音が途絶えて聞こえなくなった。視線の先は明るく、そこから外に繋がっていた。外へと飛び出すと、城の外へと繋がっていた。
城の裏側に繋がっていたそこには幾人もの兵士が並んでいた。
外に飛び出した僕に視線が集中する。
一瞬たじろぎはしたが、シャルールを探すために辺りを見渡した。
たくさんの兵士が並んで、今にも出立しそうなのに、シャルールの姿はない。
並んでいる兵士を除けて、前へと走った。
先ほど僕より先に飛び出して行った兵士が、前の方で他の兵士と話しているのが見えた。
さけど、そこにもシャルールの姿はない。
「シャ、シャルール様は?」
話を遮るように話しかけると、「先発隊と共に先ほど出立した」と早口に答えられた。
置いて行かれた。
僕を部屋で待たせたのは、このためだったのか。
「シャルール様に報告は?」
「これから早馬を出すが、間に合うか……」
このままではシャルールは背後からスオーロの兵に襲われることになる。
「早馬を出すより、早急にスオーロを叩いたほうが早いのでは……」
「すぐに攻撃を……」
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