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総失

 焼野原を進めば敵にすぐに見つかってしまう。遠回りにはなるけど、迂回して焼け残っている森を進むしかない。  水があれば、雨が降ればこんな炎を消すことだってできるのに。  まとまった雨なんてここ数年降ったことがない。豊かな森は数歩先も見えなくなるほどの濃霧のおかげだ。毎日だった濃霧は徐々に薄らぎ、珍しくなっているほどだ。  スレアが心配そうに見つめているが、「大丈夫。きっと、シャルール様に会えるよ」と言ってスレアをもう一度抱きしめると、来た道を戻るようにその身体を押した。  森の中を駆け抜けて、麻の薄い服は枝や木に当たり、ところどころ破けて、擦り傷から滲んだ血もついていた。それにこの焼けた煤が付着してますます汚れていた。  森の中を草をかき分けるようにして進んだ。  兵たちはどうしただろうか。  この炎によって足止めされているんじゃないだろうか。  シャルールが先に抜けていれば、応戦に向かう兵たちは炎によって前に進めないんじゃないだろうか。  そうなると、シャルールはアウルムに攻め入っている敵兵とエクスプリジオンからアウルムに向かう敵兵に挟まれてしまう。  嫌な予感に胸が締め付けられた。  焼けた森から焼け残った森に少しだけ入ったところを歩き続けた。熱風が吹き、手をついた木の幹も熱くなっていた。  熱さの中歩き続けて、のどが渇くが、何も持たずに飛び出してきたせいで、水は一滴もない。  それに、持っていたとしてもその水が飲めるかどうかも分からない。  元ブルーメンブラッドから各地へと流れている水のどこに毒を入れられたかが分からないのだから。  エクスプリジオンでは毒が入れられていたことは分かったけど、エクスプリジオンまで流れ着くまでに毒が入れられていれば、そこまでにある村の人たちはどうなったんだろうか。  シャルールはエクスプリジオンの水に毒が入れられたことを知る前に、出立していた。  もちろん水筒に水を入れて出ているだろう。 「早く、早く行かなくちゃ」  不安で仕方がない。  敵に襲われているかもしれない。  毒の入った水を飲んでいるかもしれない。  好機は見えない。  アウルムと協定を結んだエクスプリジオンの兵士の数がスオーロを圧倒していても、水を止められ、毒を入れられてしまった今。優位に立っているのはスオーロの方だ。

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