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総失
気持ちは焦るが、すぐ後ろを追いかけると気が付かれてしまう。
獣道から少し森に入った茂みの中を見失わないように追いかけた。
馬の蹄の音と草を切る音。
「見つけたぞっ」
先を走る兵の叫び声が聞こえて、顔を上げて先を見た。
馬に乗った兵士達がもつれ合うように戦っているのが見えた。
「シャルール……」
赤い髪が揺れるのがかすかに見えた。
森を焼く炎がその周りを囲い、シャルールのいるその先から更に他の敵兵が迫って来ているのが見えた。こちら側の敵兵もそこに飛び込もうとしている。
シャルールの他に数人の兵士しか味方は見えない。
「シャルール」
獣道に転がり出て、名前を読んでもそこに届くはずもなく、兵士の声と武器がぶつかり合う音、森を焼く怒轟でかき消されてしまう。
切れ切れになる息を堪えてそこに向かって走った。
「シャルール……」
僕がそこに行って手助けになるとは思えない。
だけど、止まることもできない。
かぶっていた筈の兜はなく、赤い髪が激しく揺れている。
剣を受けて、跳ね除ける。
馬が暴れて前足を跳ね上げる。
敵兵は次々とシャルールに向かっていく。
そのシャルールを守るように円陣を組んでいた兵が敵兵に切られて、血しぶきを上げて転がった。
「シャルール様っ」
シャルールを挟んだ向こう側の敵兵の後ろから、エクスプリジオンの甲冑をつけた兵士たちが現れた。突然のことに足を止めた。
「うをぉぉおっ」
叫び声とともに幾人もの兵士がシャルールの元に飛び込み、敵兵をなぎ倒した。
剣を構えてシャルールの前に立ちはだかるように敵兵から守った。
敵兵がすぐ足元に倒れこんできた。シャルールの視線がこちらに向いて、驚きに見開かれる。
「いいところで会ったね」
今度はすぐ後ろから声がした。
足音なんて聞こえなかった。周りに人なんていなかったはずだ。
「ディディエッ」
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