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総失

シャルールの叫ぶ声と、ドンっと抑えられるのは同時だった。 「オオシ様っ」  僕の足元にいたはずの敵兵に僕は両腕を背中に回されて捉えられてしまった。 「随分と逞しくなったね」  柔らかい物言いだけど、手には剣を持ち、その切っ先は僕の喉元に向けられている。  オオシ様と呼ばれた男の横には大きな獣が喉をグルグルと鳴らしてその太い前足で地面を搔いていた。 「やぁ、シャルール・ディン・エクス王」  口端を上げて笑う男は森のなかで出会ったあのスオーロの白金の杜人だ。 「時は来た。これは避けて通ることができない」  森で会った時に、『時はやがて訪れる』と言っていた。その時が今ということだろうか。 「我が名は、スオーロ国第一参謀オオシ。国王に成り代わり、兵を率い、エクスプリジオン国を収めに来た」  不敵に笑う。  シャルールは持っていた剣をオオシに向けて伸ばすと、「お前を殺れば殺戮は終わるのか?」と尋ねた。 「それは、どうだろう。時の運による」  不敵に笑うと、僕の喉元に向けられていた剣をシャルールへと向けた。 「我軍はそこまで迫っている。もちろん、エクスプリジオンからの後発部隊も次期にやってくる……長居は無用だ」  時間がかかればここも戦地と化すことだろう。 「それはこちらも同じだ」  シャルールの声とともに激しく剣のぶつかる音が響いた。僕を捕まえていた兵士が後ろへと突き飛ばすようにして前へと飛び出していった。  他の兵士たちもシャルールたちと同じように剣を振りかざし、戦いを始めた。  地面を転がって、うつ伏せに倒れたまま見上げると、白い獣がじっとこちらを見ていた。  もうすぐスオーロの兵がここにやってくる。エクスプリジオンの城から見えた兵とは別の部隊だろう。それを食い止めるために二手に別れたエクスプリジオンの兵士。シャルールを追いかけて出発した部隊を抜いてここまで来たけど、途中からは馬を降りた僕と大差はないだろう。  シャルールがここまで無事だったのは、持ち出した水を飲んでいないか、毒が入っていなかったかのどちらかだ。  もう少し時間を稼ぐことができれば、仲間の兵がやってくる。  スオーロの兵よりも先に着くことができれば有利になる。  祈る気持ちで拳を握りしめた。

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