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総失
地面に向けて放たれたそれが、赤い絨毯となって地面を覆い、草木を焼いた。地面に這いつくばっていた兵士は瞬く間に炎に包まれた。
「あれが、炎の杜人の正体だ」
ふっと囁くような声に顔を上げると、木の枝にオオシがしゃがんでいた。綺麗な装飾が施された甲冑は炎で焼き焦げ、中の着物も焼かれ、赤くただれた腕が見えていた。
「気を付けろ、焼かれるぞ」
オオシはそう言って、別の枝へと飛び移った。スオーロの他の兵も枝へと飛び移った。
「兵が来る」
スオーロの兵士が叫ぶと木々の間から幾人もの兵士がこちらに向かってくるのが見えた。振り返ってエクスプリジオンの部隊を探すが、見えなかった。
「窮地に追い込まれた……」
「シャルールが、シャルールが焼けてしまう……」
「自分の炎で焼けたりはしない」
「水が、水が必要だ」
側にいた兵士が空を見上げるが、森の焼ける煙で黒く覆われた空からは雨の降る様子は見えなかった。
シャルールは何かをつぶやくと地面に落とした自分の剣を拾い上げた。
スオーロの兵士とエクスプリジオンの兵士が入り乱れて戦いを繰り広げる中に、僕は倒れたシャルールを膝に抱いていた。オオロはその焼けた身体を地面に伏せ、白い獣がその身を寄せていた。
誰か、この戦いを止めて。
国王に代わり戦いを起こした敵兵は倒れ、それを倒した国王も今、ここに倒れているというのに、剣を持った兵たちは戦いを止めることなく続けている。
戦禍の中心。スオーロからの兵、エクスプリジオンからの兵、アウルムからスオーロの兵を追って攻め入った兵。膨大な兵士が戦っている。
勝者が誰なのか、敗者は誰なのか、相打ちか。
渇水した大地は焼け果て、幾人もの人が倒れ、その血を吸っていく。
「誰か……」
この戦いの幕を引いて。
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