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王の帰還

「ありがとう」  礼を言って、シャルールの横に座り込んだ。 「シャージュ。僕は何をしたらいいですか?」  シャージュは戸惑ったように視線をさ迷わせたが、「では、シャルール様をお願いします。私が指揮を取ります」と言って、横たわったままのシャルールの半身を僕に預けた。  シャージュは立ち上がると、「エクスプリジオンにスオーロ国との協定の調印の準備の使いを……」と次々に指示を出した。  雨が振り続けて、エクスプリジオンやアウルムからの兵たちと合流する頃には足元は水溜りで、「そろそろ止まないかな」とつぶやく程だった。  簡易的に貼ったテントの下にシャルールやけが人を運び込み、動ける兵たちはエクスプリジオンに帰って行った。  空を回旋していた龍はいつの間にか姿を消していたが、イグニスが、「力の回復が早いのは龍神のおかげでしょう」と言っていたのでどこか近くに降り立っているのだろうと推測できた。 「早急に城に帰れる手配をしています」  シャルールはフェルメや森の杜人の能力で少しずつ回復はしているものの、肩から背中に向けて切られた傷は深く、多量の出血と痛みに簡易ベッドに横たわったままだ。イグニスも怪我の治療を受けて、シャルールのすぐ横に控えている。  落ち着かない。  どうしてだか、変貌してしまったらしい自分の姿と周りの対応に動揺してしまって、どうにも落ち着かない。  フェルメはまるで腫れ物にでも触れるかのように、丁寧な扱いをするし、兵たちはちらちらとこっちを伺っている。  何かかぶって隠れてしまいたい気持ちをこらえて、横たわっているシャルールの側にいるが、シャルールの代わりに指揮を取っているシャージュも側にいるために、その不躾視な視線にさらされ続けている。 「しゃー、シャージュ。僕はスオーロに向かいたいんだけど」  囚われた仲間がどうなっているのか知りたい。シャルールはエクスプリジオンが統治すれば奴隷を解放してくれるとも言っていた。  まだはっきりと終戦したわけじゃない。スオーロの参謀を捉え、恐怖していた水の腐敗も止めることができただけだ。  統治しようとしているエクスプリジオンの国王も今は倒れている。 「スオーロなどに行ってはなりません」  すぐそばのフェルメが止める。 「だけど、僕の仲間はまだ囚われたままで……」 「あなたは龍神の杜人です。奴隷などと仲間なんてことは……」

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