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王の帰還
「フェルメ様。僕だって奴隷です。刻印だってある。能力があっても奴隷でも、僕たちは同じ人間です」
シャルールは同じ人間だと言ってくれた。
これまで奴隷として酷い扱いを受けてきた。暴力だって受けた。だけど、シャルールは同じ人間だと言ってくれたのだ。
「奴隷の逃亡として僕の友達はつかまって、連れて行かれた。今もきっと酷い仕打ちを受けているに違いありません。だから、少しでも早く仲間の元に……」
捉えられれば僕も逃亡者として捉えられるだろう。仲間と一緒に。
エクスプリジオンに勝機がある今、一刻も早くスオーロを占拠し、奴隷を解放してほしいのだ。
「奴隷など……」
フェルメは不機嫌に顔を顰めて立ち上がり、「ブルーメンブラッドに向かう用意をしてきます」と言ってその場を離れた。
「気に病むことはありませんよ。ディディエ。エクスプリジオンは奴隷の廃止と廃絶を訴えています。シャルールはその筆頭です。あなたもいます。スオーロはすぐにでも敗戦を受け入れるでしょう」
イグニスは言いながら僕の頭を撫でた。
「シャルール様も早く回復してくださればいいんですが……」
「抱きしめたら直りませんか?」
湖に向かう途中、イグニスはシャルールを抱きしめるようにして回復させていた。そうすれば早く回復するかもしれない。
「能力は戻っても傷は簡単に治せないのですよ」
能力でもできることとできないことがある。治癒力を高めることはできても、治すことはできないとイグニスは言っていた。
「フェルメ様も全力を尽くしてくれています」
イグニスよりもフェルメの方が能力は高く、そのフェルメが全力を尽くしてくれている。
「シャルール様が回復したら、僕は、ブルーメンブラッドに行かなくちゃいけませんか?」
フェルメがいなくなって、イグニスに小声で確認した。
フェルメはすぐにでも僕をブルーメンブラッドに連れて行こうとしている。今だって、その用意をしに出て行ったのだから。
「フェルメ様も水の宮殿の要人の方々もずっと龍神の杜人の存在を信じて、探し続けてきました。それはブルーメンブラッドの国民だけではなく、この世界の人々の願いでもあります。水を必要とするすべての生き物の願いです」
水の浄化はできても、水の腐敗を止めることはできない。減り続けていく水を増やすこともできない。
「でも、僕は、どうしたらいいのかわかりません」
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