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王の帰還
突然、龍神の杜人だと言われても姿が変わっただけで能力をどう使うのかも分からない。
「それを知るためにブルーメンブラッドに向かうのでしょう。これほどまでに雨が降っているので、早急にとはならないでしょうが、ブルーメンブラッドには行く必要はあるはずです」
「それは、そうでしょうけど……」
行ったら帰れなくなりそうだ。
帰るって……僕は元々スオーロの奴隷だから帰るところはそこで、でも、奴隷が解放されれば帰るところは自由で、でも、シャルールが『俺の物になれ』と言っていたし……。求婚……されていた。
横たわったシャルールを見ても、目を閉じたままだ。
「シャルール様がどう言われるかはわかりませんが、状況が許してくれるかもわかりません」
シャルールを見た僕を見てそう言った。
「シャルール様がディディエを気に入っているのは分かっています。けれど、あなたが龍神の杜人であったことで状況は変わってしまいました。シャルール様が回復されたら……話し合ってみましょう」
イグニスは、「少し席を離れましょう」と言ってシャージュを連れて離れて行った。
「全く、気が利きすぎている」
シャルールの声に振り返ると、横になっていたシャルールが目を開けた。
「寝ていたんじゃないんですか?」
「これだけにぎやかだと目も覚める」
不機嫌に言いながら、視線だけをこちらに向けた。
「お前が誰でも俺は構わない」
「でも、僕はブルーメンブラッドに行かなくてはならないみたいで……」
「そうだろうな。だが、別に帰ってこられなくなるわけでもないし、会えなくなるわけでもない。お前の自由にしたらいい」
自由って……。シャルールは奴隷を解放して自由にしてくれると言ったし、僕を側に置きたいと望んでくれた。
「イグニスが言うように、状況は変わったがお前という人間が変わったわけじゃない。想いも変わらない」
シャルールが近くに寄るように手招きをした。そっと近づくとぐっと腕を引かれて、寝台の横に膝まずいた。すぐ側にあるシャルールの顔に身を引こうとするが、シャルールが肩を掴んで阻止した。
「ちょっと、シャルー…」
「さっさと婚姻を認めればいいんだ。俺の物になれ」
シャルールが僕の長く伸びた髪を撫でて、前髪をかき上げる。
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