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王の帰還

 ヴァレンは診察でもするかのように、僕の瞳をじっと見つめて、髪をわしゃわしゃと撫でた。 「間違いないな。お前は龍神の杜人だ。一度会ったことがある俺が言うんだから間違いない。だが、お前の両親はスオーロの奴隷だったんだろう?」 「はい」  両親は間違いなく、奴隷だった。 「どういうことか……」  ヴァレンは首を傾げた。 「ああ、これを」  ヴァレンから預かって腰に付けたままの短刀を差し出した。 「これはお前が持っていろ」 「でも、これは大切なものなのでしょう?」 「ああ。俺が龍神の杜人から預かったものだ」  ヴァレンは2人の龍神の杜人に会ったことがあると言っていた。 「あの時の女の子どもがお前なのかもしれないな」  龍神の杜人は遺伝だと言っていた。可能性があるかもしれないが、「僕には父親がいましたよ」と疑問を口にした。 「逃げ延びた先でお前を預けたのかもしれない。水が枯れなかったのは、どこかで生き延びていた龍神の杜人がいた証だ。あの女性が龍神の杜人であったなら、それを受け継いで生き延びた杜人がいたってことだ。だから、フェルメは杜人の生き残りを探していたんだ」 「じゃあ、僕の両親は違う人だったってことか……」  確かに父は僕を隠していた。  奴隷の子どもが身売りされることはよくある。酷い仕打ちを受けることも度々だ。だけど、それだけが理由でなかったら。 「もしかしたら、お前の両親も杜人であの女性が母親ではなかった可能性もあるがな」  ヴァレンは、「でもまぁ、お前はあの男によく似ている」と言った。 「龍神の杜人はブルーメンブラッドの国王家の血筋です。その男と血が繋がっていて、似ていてもおかしくはない」  やってきたフェルメがそう言って、「馴れ馴れしくするでない」と言ってヴァレンをけん制した。 「この者は今現在唯一の龍神の杜人です。国王家の跡取りで国王となる者です」  フェルメは言い募るが、「フェルメさん。今見つかっているのは僕だけかもしれませんけど、もしかしたら他にもいるかもしれないし……」と言うとフェルメは振り返って首を横に振った。 「龍神の杜人はあなた一人です」 「どうして分かるんですか?」

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