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王の帰還
ここには僕を助けてくれた兵士たちがたくさんいる。シャルールもイグニスもヴァレン、シャージュ、僕を助けてここまで連れてきてくれた人たちがいる。だけど、これまでスオーロで一緒に耐えてきた仲間がいる。
「スオーロにはこの雨が止み次第出立する予定です」
オオシは側にいる白虎が守るようにして囲っていて、手を出すことができない。動物たちもあまり警戒しない森の杜人が近づいても、その警戒は解かれなかった。雨よけの簡易テントは張ってはあるが、降りしきる雨に小さな水たまりは徐々に大きく、足を取られるほどになっている。
横たわったままのオオシが生きているのかさえ、確認ができないのだ。
「オオシはエクスプリジオンに連れ帰る予定ですが、あのままでは……」
イグニスも白虎の存在に手を焼いているようだ。
スオーロの兵もオオシの側にはいるのだが、白虎をどうすることもできないようだ。
鋭い爪と牙をむき出しにして、オオシを守るように唸っている。
「あの虎はオオシにしか操れないようですし……」
兵の集まっている広場の奥の方から声が聞こえた。
イグニスはさっとそちらに視線を向ける。
馬の嘶きと共に、複数人の足音が聞こえる。
駆けてくる足音とそれを止める声。兵たちの罵声も聞こえて、何事かと身構える。
「オオシッ、オオシっ」
若い女性だ。腰まである長い黒髪は雨に濡れて、着ている衣も雨にすっかり濡れている。
「グルゥゥゥウ」
白虎が声を上げた。
女は弾かれたようにその白虎の元に駆け寄った。
「オオシ……オオシッ」
これまでその場を離れようとしなかった白虎がさっと身を翻して地面に伏せた。
横たわったオオシの胸に顔を伏せると、咽び泣くように名前を何度も呼んだ。
「イチ様っ……イチ様っ」
女を追いかけて幾人もの侍女が追いかけてきて、傍らに跪いた。
辺りは騒然として、制止しようとした兵たちも集まり、オオシを中心に取り囲む輪ができた。
イグニスとシャージュもその輪の中に入っていった。
雨が降る中、イチと呼ばれた女は泣き続け、一緒に来た侍女達のすすり泣きも聞こえる。
侍女たちと共にスオーロの兵たちも集まっているが、悲しみに打ちひしがれた様子で、戦意は感じられない。
兵たちがさっと両側に引いて、スオーロ特有の着物を着た男が現れた。
大きな傘で雨を避けて、前に進み、オオシの側まで来ると、「支度を」と言った。
男を中心に兵や侍女たちは膝を付いて恭しく頭を下げている。
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