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彷徨う者

「スオーロの皇子はエクスプリジオンの兵に連行されているだろうから、正面から入ってくるだろう。未だ戦いは続いているが、この城へは正面の門からしか入れない。シャルール様も同じだろう」  王の間の前に広がる大きく広い廊下の先には豪奢なステンドグラスがあしらわれた窓がある。その窓からは正面の門がよく見えた。 「え、僕は正面の門を通ってないですよ」  ここに連れてこられたとき、僕はシャルールと一緒に街外れの宿に入って、その地下を通って城の地下へと連れてこられた。 「これだけの大きな城だから、どこか隠し通路があるのだろう」 「ディディエ、そこに案内してください。グルードはここでこの者達と待機していなさい」  僕の後ろにいたアレサと仲間たちは頷いてグルードと共にとどまった。 「案内って言われても……」  小さな扉から廊下に出たのは覚えているけど、それがどこだったかまでは思い出せない。 「何か目印になる物は覚えていませんか?」  思い出そうと目を閉じた。  かがんで出るほどの小さな扉。それは板を外して開いたもので、一見すると用具入れのように見えた。出てすぐに目に飛び込んできたのは、綺麗に手入れのされた庭園だ。 「庭園が見えました。ステンドグラスの窓と廊下の天井には絵画が飾られていて……」 「その絵画は何が描かれていた?」 「えっと……」  絵画は天井の一番高いところに大きく描かれていた。上半身裸の逞しい男が、剣を振り上げて馬に乗っていた。長い髪をした赤い髪の男。それは火の杜人だ。 「馬に乗った火の杜人です」 「馬に乗っていたのだな。他には?」 「髪は長くて、剣を振り上げていて……」 「髪の長い火の杜人といえば、エクスプリジオンのエクス王だろう。たぶんあそこだ」  フェルメが思い出したように頷いて歩き出す。  城の2階に当たる王の間から正面の階段を下りて、正門に続く扉の前を通り過ぎて、左へと突き進んでいく。 「この絵ではないか?」  立ち止まったフェルメに指さされて見上げた。 「これです。だけど、角度が……」  見上げたまま先へと進む。突き当りの少し手前。  ステンドグラスと庭は確かにここだ。振り返った壁の下には空気孔用の板が貼られている。それは少し先にもあるが、「ここです」と僕が言うと、フェルメは屈んで板を外した。 「確かにここのようですね」

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