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彷徨う者
中を覗き込んで確認するとするりと降りた。
「シャルール様はここから戻って来るはずです」
外は味方も敵も入り乱れての戦いが続いている。
瀕死のシャルールがそこを通って無事でいられるはずがない。隠し通路なら、信頼できる仲間しか知らないはずで、もし、敵に知られてもその数は圧倒的に少ない。
「迎えに行きます。僕が行ってきます。フェルメ様はここに残ってシャルール様が来たときのための指揮を取ってください」
中にいたフェルメの腕を引いた。
フェルメが王座を守っていることを伝えて、ハルの企みを伝えて……。
「では、グルードに後を追わせます」
フェルメと入れ替わりに通路へと入った。
来たときとは反対に細い通路を下りる。今はシャルールの照らしてくれていた炎も無い。暗い通路を手探りで確かめながら進んで行った。
一度通った道だけど、真っ暗闇の中を通るのは緊張した。音もなく手探りでだけど急いで先に進む。
「シャルールッ」
通路の先に小さな炎が見えて、叫んだ。
通路の先から徐々に灯される炎。
「シャルールーッ」
叫びながら転びそうになりながら走った。
何度も、何度も呼んで、その姿が見えた時、こめかみが熱くなった。まだだ、まだ零したら駄目だ。
「ディディエッ」
名前を呼び返したのは、ヴァレンとイグニスだ。
「シャ、シャルールッ」
ヴァレンに背負われているのはシャルールだった。
「ディディ……エ。無事か」
シャルールのか細い声に胸が鷲掴みにされる。苦しさにこみ上げてくるものを押さえ込んだ。
「ディディエ。どうしてあなたがここにいるんですか?」
驚いたイグニスの声に顔を上げる。
「水の、水の宮殿からここに来ました。ハルが、スオーロのハルがここを手に入れようとしている。兵の中に裏切り者がいて……」
「ディディエ。ハル様は討ち捕らえ、処刑しました」
イグニスに言われて、驚きに目を見開いた。
「じゃあ、なんで戦いは終わってないのですか」
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