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彷徨う者

「もう少しです」  イグニスが頷く。 「シャルール様、そろそろ起き上がれますか?」 「ああ……。支えてくれ」  シャルールは目を開ける。フェルメと共にかざしていた手を放すと、イグニスが支えてシャルールを起こした。  痛みに顔を顰めるが、「大丈夫だ」と言ってゆっくりと立ち上がった。イグニスと兵に両脇から支えられて、「王の間を明け、正面の窓を明けよ」と言った。  シャルールは大座に置かれた王冠を手に取って王の間のテラスに立つと同時に、城の正面の門が開いた。大きな音を立てて開かれた門は街へ繋がり、街からもシャルールの立つテラスはよく見えた。  門の立てる音により、戦っていた兵士たちの怒号がやむ。逃げまどっていた街の民は新王の言葉を聞くために耳を澄ませる。  さっと、喧騒が止み全てがシャルールへと向けられる。 「ここにエクスプリジオンの勝利を宣言する。スオーロの皇子ハルの死体を公開し、皇女イチを幽閉する」  イグニスと数人の兵はシャルールの後ろに膝を着いて待機している。 「エクスプリジオンの兵士たちよ、凱歌を上げよ」  シャルールの声に、街に戻ってきた兵たちは剣と盾を叩き合わせた。それは徐々に大きくなり、歓喜の歌と変わった。  シャルールは赤い髪をかき上げると、片手を上げて歓声に応えた。  踵を返すとテラスから中へ入ったシャルールをイグニスや兵たちが支えた。  シャルールはそのまま自分の部屋へと運ばれて行った。  街からは歓喜の声が響いていた。

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